炎の一筆入魂BACK NUMBER
「もっとリリーフの感覚で」先発転向のカープ栗林良吏が迷いを断ち切り、ようやく見出した自分だけの「先発投手像」とは
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前原淳Jun Maehara
photograph bySankei Shimbun
posted2026/03/16 11:00
今春3度目の実戦登板となったDeNA戦で、5回を無失点で投げきった栗林
教育リーグでの登板後、ブルペンで投じた54球で左足を大きく上げるフォームへと修正。映像を見返し、菊地原毅、石井弘寿両コーチからの助言もあり、体の開きが早くなる悪癖も矯正した。何よりマウンドでの意識を変えた。
「リリーフのように入りたい。みんなが思うような“先発”でいる必要はないのかなと。それはどこかで分かっていたことなのに、できなかった。探りながら投げていたつもりはないんですけど、もっとリリーフの感覚で行かないといけない。今のままではだらだらとした、メリハリのない投球になってしまう。自分が求められているものは、そこじゃない」
先発としてどう投げるかではなく、自分がどう投げてきたのか──。1球で勝負が決まる抑えとして体現してきた“一球入魂”の姿勢を先発でも貫くことを決めた。進むべき道が拓けた。
リリーフの経験を生かして
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12日のDeNA戦では立ち上がりからギア全開だった。先頭の三森大貴に2球真っすぐを続けて追い込むと、3球勝負で空振り三振に切った。筒香嘉智も再びフォークで空振り三振を奪い、続く佐野恵太は2球で二直に打ち取った。先発転向後、初の三者凡退で滑り出した。
その後もストライク先行の強気な投球は、腕の振りにも表れていた。前回痛打された変化球が冴え、特にフォークはストライクゾーンで勝負しても打者に空を切らせた。
プロ最長の5回は1死満塁としたが、三森を一ゴロに打ち取り、代打・松尾汐恩を2球続けたフォークで空振り三振に切った。
「リリーフと同じ気持ちで、結果的に5回を投げ切れました。もともと5回を投げ切るためにというより、一人ひとりという気持ちでした」
プロでは先発としての経験も実績も自信もない。ただ、リリーフとして積み重ねてきたものがある。それをすべてなくすのではなく、昇華させて勝負する。「先発栗林」として大きな一歩を踏み出すことができた。
光は見えても、手探り状態はまだ続いていく。失敗しても次の日にやり返せるリリーフとは違い、先発では次回登板まで時間を要す。失点した次のイニングにもマウンドに上がらなければいけない。先発としての正解はまだ見えていない。それでも、立ち止まるわけにはいかない。試行錯誤を重ねながら、「先発栗林」は形づくられていく。
