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「やっぱりムネとやりたい」大谷翔平が“練習ペア”に指名したのは村上宗隆だった…WBC満塁本塁打のウラに大谷の助言「翔平さんに誘われたら断れない」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/03/12 17:04
フリーバッティング練習前に話し込む大谷翔平(31歳)と村上宗隆(26歳)
「いや、茶化していますよね(笑)」
スーパースターから“相棒”の指名を受けたことについて、村上はそう口にしてかぶりを振った。ただし、その表情は明るい。
「(大谷の弾道には)もう驚かなくなったっス。あれが普通なんで。翔平さんの打撃、すごいなと思って見ていますよ」
村上「自分を見失ってしまっては…」
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村上と大谷のフリーバッティングとの間には、ちょっとした“因縁”がある。2023年、ヤクルト時代に参加した前回大会では、途中合流した当時エンゼルスの大谷がフリーバッティングで見せた打球にただ圧倒された。
「言葉が出ないというか……初めて感じたことが色々ありました。凄いなの一言」
そう話した23歳は明らかに顔色を失っており、自らの現在地とメジャーリーガーとの大きなレベル差の前に、愕然としているかのようだった。
村上は1次ラウンドから不振に陥ったが、準決勝のメキシコ戦で起死回生のサヨナラ打を放ち、決勝のアメリカ戦ではソロアーチと劇的Vの立役者になった。しかし、大会後の23年シーズンは春先から打撃が低迷。原因の一つは、WBCで大谷らトップレベルの選手に刺激を受けて様々なトレーニングを試したことで自分自身の軸を見失ってしまったことだった。
昨春のNumberWebのインタビューの中で、村上はこう話している。
「自分を見失わないことの大切さというのをすごく感じました。打撃が良くなりたい、野球が上手くなりたい、と思うことは勿論ですけど、そこに対して自分を見失ってしまっては意味がない。(略)人それぞれに特長がありますし、それぞれやるべきことは違う。高みを目指すのは当たり前ですけど、まず自分を見失わないこと。何より大前提としてチームに対する気持ち、勝敗に対する強い思いがものすごく大切だなとあらためて思いました」
試行錯誤の中で自分と向き合い続け、昨シーズンは故障も経験。苦しい時間を乗り越えてきたからこそ、手にしたものがある。あれから3年たち自らもメジャーリーガーとなったいま、一番近くで大谷のフリーバッティングの弾道を目にしても「驚かなくなった」と口にする理由は、決して“慣れ”だけではないだろう。
ベンチでも村上に声をかけていた
1次ラウンド最終戦のチェコ戦では待望のアーチが飛び出した。それまで14打数2安打と鳴りを潜めていた大砲が爆発。8回2死満塁の場面で、高めのストレートをバックスクリーン右へと運んだ。マイアミでの準々決勝以降へ大きな弾みとなる一発。復調へと至る舞台裏にも、大谷の存在があった。


