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17年ぶりWBC8強…韓国野球は“暗黒時代”を抜けるのか?「日本の高校球児13万人、韓国は3200人」謙虚な英雄イ・ジョンフら台頭も、野球離れの現実
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キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2026/03/12 11:01
大谷翔平とドジャースで同僚のキム・ヘソン、韓国代表の主将イ・ジョンフ
新たな英雄の登場と、17年ぶりのWBC決勝ラウンド進出――しかし、そうした華やかな話題の裏で、韓国野球が抱える問題は決して小さくない。
韓国は2009年WBCで準優勝して以降、2013年、2017年、そして2023年大会では3大会連続の1次ラウンド敗退という屈辱を味わった。2015年のプレミア12こそ準決勝で日本を逆転劇で破り、決勝でアメリカを下して初代王者に輝いているが、“日本との実力差”には開きがあることは誰もが認めるところでもあった。
特に投手陣の育成は急務だ。
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MLBで活躍する日本人投手が次々と現れる一方、韓国人投手の存在感は近年やや薄れている。2001年にダイヤモンドバックスでワールドシリーズを制覇したキム・ビョンヒョン(19年に引退)、“日本キラー”と呼ばれカージナルスで2シーズンプレーしたキム・グァンヒョンのほか、阪神でプレーしたオ・スンファン(昨季で引退)もメジャー経験者だったが、2025年にMLBで登板した韓国人投手はいない。今大会の投手陣でもMLB登板の経験があるのは、16年ぶりに代表入りした38歳のリュ・ヒョンジンとダニングの2人のみだ。
「13万8000人」と「3200人」
昨年、大谷翔平と共にドジャースでワールドシリーズを制覇したキム・ヘソンは、帰国後に出演した番組『JTBCニュースルーム』でこう語っている。
「やっぱり日本の投手がMLBでこれだけ活躍して、WBCでも優勝している。日本の選手のいいところがたくさん出ている。それは現実なんですけど……。でも韓国野球にも未来があり、努力すれば日本より強くなる日が来ると思います」
この言葉は、現在の韓国野球が抱える歪な構造を象徴している。現在、韓国で野球部を持つ高校はわずか82校(大韓野球ソフトボール協会=2021年2月時点)。一方、日本高野連の2020年7月末データでは加盟校が3932校に上る。部員数も日本の約13万8000人に対し、韓国は約3200人だという。単なる人口比の差では説明できないほど開きがある。さらに韓国では、徴兵制度も選手のキャリア形成を複雑にする。こうした「エリート主義」による層の薄さが、近年の国際大会での苦戦の要因とされてきた。
もっとも、興行としてのプロ野球人気はむしろ“空前の活況”と言っていい。2024年に史上初の年間1000万人動員を達成すると、その勢いは翌2025年も衰えず、ついに1200万人の大台を突破したと報じられている。単純計算では国民の約4分の1が球場を訪れたことになり、球界の熱狂ぶりを物語っている。
「競技力の低下」と「興行成功」。この不均衡なギャップを埋めるために、今の韓国野球に何が必要なのか――その答えは、オーストラリア戦の死闘で見せた「泥臭く勝利をもぎ取り、ふたたび世界へ挑む執念」である。また、“世界との距離”を認めつつも、イ・ジョンフやキム・ヘソンのようにこれから未来を切り拓こうとする新世代の気概なのだろう。
韓国代表は10日深夜にチャーター機でマイアミへ飛び立った。
「僕たちがチャーター機に乗ってマイアミへ行き、MLBのシステムを経験できる。それが何より嬉しい」
イ・ジョンフがそう語ったように、この奇跡の突破は、停滞していた韓国野球の時計を再び進める大きな一歩となるはずだ。17年前の輝きを取り戻す旅は、今、マイアミの空の下で第二章を迎えようとしている。〈全2回〉

