プロ野球PRESSBACK NUMBER

野村克也はなぜ“松井秀喜をドラフト指名しなかった”のか? 「史上最高のヤクルト投手」野村が絶賛した伊藤智仁の伝説「わずか3カ月の投球で…新人王」 

text by

太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

PROFILE

photograph byKazuaki Nishiyama

posted2026/03/26 11:50

野村克也はなぜ“松井秀喜をドラフト指名しなかった”のか? 「史上最高のヤクルト投手」野村が絶賛した伊藤智仁の伝説「わずか3カ月の投球で…新人王」<Number Web> photograph by Kazuaki Nishiyama

わずか3カ月の全盛期にもかかわらず今も語り継がれる伊藤智仁とは

わずか3カ月の圧巻投球で…「新人王」 

 この試合からほぼ1カ月後の7月4日の巨人戦で先発したあと、伊藤は右ひじ痛を訴えて戦線離脱し、結局このシーズンに復帰することはなかった。4月20日のプロ初登板から3カ月弱の間に、14試合に登板して7勝2敗、5完投(うち4完封)、防御率0.91、109回を投げて126奪三振という伝説的な数字を残し、このわずか3カ月弱の成績だけで、この年の新人王に選ばれた。それだけ、大きなインパクトを残したということだろう。

 その後の伊藤は、肘や肩の故障に苦しみながらも、97年にはクローザーとして復活してカムバック賞を受賞したが、史上最高と言われたスライダーが完全に戻ることはなかった。

 全盛期の伊藤は、ストレートも150キロをゆうに超え、さらに伸びが尋常ではなく、バットに当てることすら難しかった。そこに史上最高のスライダーが来る。打てる球がないと言われたこの3カ月間は、史上最高の投手の一人だったと言えるだろう。

伊藤の3カ月vs.菅野のベストシーズン

ADVERTISEMENT

 さて、当企画の現チャンピオン、2017年の菅野智之との対決である。当企画の趣旨は、二人の投手のベストシーズンを比較して、もしその成績が同年度だったとしたら、どちらが沢村賞を獲るかというところにあるので、3カ月しか投げていない伊藤は沢村賞の受賞資格を満たしておらず、本来対象外になる。今回はあくまで参考記録としての対決になる(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高)。

【菅野】登板25、完投6、完封4、勝敗17-5、勝率.773、投球回187.1、被安打129、与四球31、奪三振171、防御率1.59、WHIP0.85

【伊藤】登板14、完投5、完封4、勝敗7-2、勝率.778、投球回109.0、被安打70、与四球35、奪三振126、防御率0.91、WHIP0.96

 伊藤の防御率0.91は驚異的である。当企画でこれまで取り上げてきた大投手たちのベストシーズンでも、防御率0点台は沢村栄治ただ一人である(1937年の0.81)。

 9イニングあたりの被安打数は、菅野が6.20に対して、伊藤は5.78。この伊藤の数値を上回るのは、スタルヒン(5.05)、沢村栄治(5.09)、ダルビッシュ(5.33)、江夏豊(5.47)、大谷翔平(5.60)、山本由伸(5.76)の6人だけだ。この中に、現役のダルビッシュ、大谷、山本の3人が入っているのは特筆に値する。彼らが、いかに日本で打者を圧倒していたかを示すものだろう。

 9イニングあたりの奪三振数は、菅野の8.22に対して、伊藤は10.40と、こちらも伊藤が圧倒。伊藤のこの数値を上回るのは、千賀滉大(11.33)、野茂英雄(10.99)、大谷翔平(10.98)、江夏豊(10.97)の4人だけだ。

 伊藤は、3カ月限定とはいえ、防御率、被打率、奪三振率で、歴史に残る投球を繰り広げたといえるだろう。

関連記事

BACK 1 2 3 4
#ヤクルトスワローズ
#伊藤智仁
#野村克也
#松井秀喜
#菅野智之
#ダルビッシュ有
#大谷翔平
#長嶋茂雄
#読売ジャイアンツ

プロ野球の前後の記事

ページトップ