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野村克也はなぜ“松井秀喜をドラフト指名しなかった”のか? 「史上最高のヤクルト投手」野村が絶賛した伊藤智仁の伝説「わずか3カ月の投球で…新人王」
posted2026/03/26 11:50
わずか3カ月の全盛期にもかかわらず今も語り継がれる伊藤智仁とは
text by

太田俊明Toshiaki Ota
photograph by
Kazuaki Nishiyama
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「プロ野球史上、魔球と呼ばれるようなとんでもない変化球を投げたのは誰か」といった話題で、野茂英雄(近鉄他)のフォークボール、潮崎哲也(西武)のシンカーなどと並んで必ず名前が挙がるのが伊藤智仁の高速スライダーだ。
野村克也の絶賛「史上最高の投手」
その球は、ストレートと区別がつかないほど高速で打者の近くまで伸び、そこから急激に横に曲がり、さらに加速しながら鋭角的に曲がっていくように見えたという。
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スライダーの使い手といえば、稲尾和久、ダルビッシュ有(パドレス)、田中将大(巨人)、大谷翔平(ドジャース)など枚挙にいとまがなく、 2009年のWBC決勝で最後の韓国の打者を空振り三振に仕留めたダルビッシュのスライダー、2023年のWBC決勝で米国の最後の打者トラウトを空振り三振に打ち取った大谷のスライダー(スイーパー)は多くの野球ファンの目に焼き付いている。
では、ダルビッシュや大谷のスライダーと、伊藤のスライダーではどちらがすごかったのか。伊藤の時代にはトラックマンがなかったため、回転数やスピード、横と縦の変化量などを数値で比較することはできない。が、映像で比べてみると、例えばWBCの決勝で、相手打者はスイングをしている。それに対して、伊藤のスライダーは、多くの打者がスイングすらできずに見送っているケースが多い印象を受ける。追い込まれたカウントでは振りにいくが、おそらくストレートと思って振りにいきながら途中でスライダーと気づいてタイミングを外され、腰が砕けて手だけのスイングになって三振というシーンが多い。
この打者のリアクションに関して、伊藤の伝説の3カ月時の監督だった野村が面白いエピソードを残している。当時、広島の主力打者だった金本知憲が野村に「伊藤のスライダーはスライダーじゃないですよ」と語ったという。野村はさらにこう語っている。

