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八百長で人気低迷から17年…台湾野球は“超人気スポーツ”に激変していた「国民性が素晴らしい」台湾プロ野球の監督・平野恵一(元阪神)が語る現地の野球熱
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byGetty Images
posted2026/03/06 11:02
台湾プロ野球で2024年シーズンを制覇した中信兄弟。その監督を務めるのが平野恵一だ
「今も通訳に頼るようにしています。あえて、言葉を覚えない」
一つは中途半端な指導をしたくないためだという。日本の場合、幼少期から野球の基礎を徹底的に叩き込まれており、上のカテゴリーに行くほど抽象的な表現でもまかり通ることが多い。テレビ番組などで長嶋茂雄氏が「バッ」「ビュッ」など擬音で選手指導していたシーンが流れていたが、決してミスターが特別だったわけではなく、プロ野球を取材する中でそのような場面には何度も出くわした。むしろプロという土台がある選手への指導においては、そんな表現の方が的確に伝わることもあった。
一方で台湾の場合は、学生時代などに細かなことを徹底して叩き込まれる野球文化ではないという。
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「ただ、プロ野球選手になっても彼らの聞く姿勢や学ぶ姿勢は本当に素晴らしいです。質問も細かい。だからこそ、僕が中途半端に覚えた言葉で伝えてしまうのは良くないと思ったのです」
それにもう一つ理由がある、と少し照れ笑いして言葉を継ぐ。
「やっぱり国民性が素晴らしいんですよ。だから情に流されちゃう。でも、プロって厳しくしなきゃいけない部分もあるじゃないですか。僕は正確なジャッジメントをしなきゃいけない立場。嫌われ役にだってならないといけない。情があると正しい判断ができなくなるので、このやり方はまだ貫いていこうと思っています」
「観客動員300万人を突破」
平野が渡台し、とくに一軍監督に就任した2024年以降は彼自身にとっても、また台湾球界にとっても明るい話題が多い。前述したように監督就任1年目にCPBL優勝監督となり、同年秋に台湾代表がプレミア12で初優勝を果たすと台湾全土がお祭り騒ぎとなった。
野球人気は爆発的に高まり、昨季のCPBLは観客動員が初めて300万人を突破した。かつて台湾球界は八百長などの不祥事発覚から人気が低迷し、球団解散も相次ぐなどして、2010年以前には1試合平均の観客動員数が約2000人まで落ち込んだ時期もあった。そこから、2025年は1試合平均およそ1万人と5倍にまで膨れ上がった。中信兄弟も昨季は50%増を記録したという。まさに隔世の感の中、開幕間近となったWBCへの注目度も現地では当然高い。
しかし、平野は台湾に渡った当初、現実を目の当たりにして頭を抱えたという。
「果たして、本当にプロなのだろうか……」
一体、平野は何に絶句したのだろうか。
〈つづく〉

