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八百長で人気低迷から17年…台湾野球は“超人気スポーツ”に激変していた「国民性が素晴らしい」台湾プロ野球の監督・平野恵一(元阪神)が語る現地の野球熱
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byGetty Images
posted2026/03/06 11:02
台湾プロ野球で2024年シーズンを制覇した中信兄弟。その監督を務めるのが平野恵一だ
「阪神ではロッカーが隣だし、年齢も近かったのでよく喋っていました。ただ当時は海外野球に全く興味はなくて、台湾球界の話を訊ねたこともありません。一方で海外の文化などは少し気になっていました。現役の頃は年末年始、家族で海外旅行をするのが通例。僕自身の自主トレも兼ねていましたけど。だから、いつか時間が出来たらゆっくり海外を回りたいなと考えていたのです。やっとユニフォームを脱げると思っていたところに、林さんから台湾の話が来た。正直最初は『いや、そういう海外ではないんだけどな』が本音でした(笑)」
震災で多額の義援金…恩返ししたかった
しかし林威助の熱心な誘いに加え、中信兄弟球団の誠意も感じた。なによりもう一つ、平野の心を突き動かすものがあった。
「僕が、というのもおかしいですが、1人の日本人として台湾に恩返しをしなくちゃいけないと思ったのです。2011年の東日本大震災の時、台湾の皆さんから200億円の義援金や400トンの援助物資が届き、震災の翌日には世界のどこよりも早く救助隊を派遣してくださった。このことは日本人として感謝の気持ちを忘れてはいけないと思いました。
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また、2013年のWBCでも心打たれました。東京ドームでの日本対台湾。侍ジャパンが1点ビハインドだった9回に鳥谷敬の二盗から井端弘和さん(現侍ジャパン監督)のタイムリーで土壇場の同点、その後延長で日本が勝った、あの試合です。日本にすれば劇的勝利ですが、あんな負け方をしたら間違いなく悔しくてたまらないですよ。だけど、台湾チームは試合後、ほぼ全員が悔し涙にくれながらもグラウンドに出てきてマウンドを囲んでスタンドへ深くお辞儀をしたのです。応援してくれたファンへの感謝。そして日本チームへのリスペクトも感じられた。本当に素晴らしいチームだと感動しました。そんなきっかけから台湾に魅力を感じていたので、このオファーにも運命を感じました。また、妻から『すごく光栄じゃない。アナタに課された使命なのよ。だから行きなさい』と背中を押してもらえたのもありますね」
現地5年目…台湾プロ野球の今
2022年シーズンに中信兄弟の打撃・内野統括コーチに就任。その後ファームの野手発展ディレクターを経て、2024年から一軍監督を務めている。
渡台して今季でもう5年目。現地の生活にもすっかり馴染んでいるが、こと野球に関してはある拘りを持っている。

