オリンピックPRESSBACK NUMBER

「そんなんだったらやめれば?」迷える渡部暁斗を動かした“妻の一言”…複合競技の第一人者が語る再起までの葛藤「なんのためにやってんだろう…と」 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

PROFILE

photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA

posted2026/03/01 11:00

「そんなんだったらやめれば?」迷える渡部暁斗を動かした“妻の一言”…複合競技の第一人者が語る再起までの葛藤「なんのためにやってんだろう…と」<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto/JMPA

今季限りの引退を表明している37歳の渡部暁斗。自身6度目となる最後の五輪はメダルなしに終わった

「不完全燃焼だった」銅メダル獲得の北京五輪

 北京五輪で一区切りにしようかな。周囲にことさら言うことはなかったが、妻の由梨恵さんには気持ちを伝えていた。しかし、個人ラージヒルと団体で銅メダルを獲得した5度目の五輪を終えてみて、その決心が鈍った。

「なんか不完全燃焼だったんですよ。それはメダルの色が金じゃなかったからではなく全体的に。無観客開催だったのもそうだし、自分たちもマスクしてて気持ち悪い中で日々を過ごしていて、なんだかやめるにやめられなかったんです」

 結局、現役を続けた。しばらくは「ダラダラ続けていた」。いい加減に競技をしていたわけではない。日々の練習にはしっかりと取り組んでいたものの、気持ちの面が宙ぶらりんだった。

ADVERTISEMENT

 競技力の面でも曲がり角に差しかかっていた。若い世代の台頭、技術の変化などが重なり、かつては当たり前だった優勝や表彰台を争うレースができなくなっていた。

「10位台、20位台とかでゴールする自分が許せないというか、受け入れがたかったですね。自分への怒り、そこから感じる悲しさ、負の感情がすごく多かった。それこそなんのためにやってんだろう、自分はこんななのかと」

 思うような結果が出ないからこそ、そんな自分を守るためにまた気のないようなことを言いたくなる。

「その頃はいつ辞めてもいいんだけどなみたいなあ、とか力のない発言が多かったですね。自分でも薄々わかっていながら、そういう発言をしてしまっていました」

<次回へつづく>

#2に続く
「競技者として悔いなく死ねる」ノルディック複合・渡部暁斗がミラノで見せた“あきらめの美学”「いまはちゃんとアスリートです」第一人者の27年間

関連記事

BACK 1 2
#渡部暁斗
#山本涼太
#ミラノ・コルティナ五輪
#オリンピック・パラリンピック

冬季スポーツの前後の記事

ページトップ