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英才教育の父に「彼は素晴らしい父親。ただ…」アリサ・リュウの“物語”は母国でどう受け止められた? 使用楽曲が再ブーム、地元アイス店は「生涯無料」に 

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一野洋

一野洋Hiroshi Ichino

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photograph byAsami Enomoto / JMPA

posted2026/02/27 17:05

英才教育の父に「彼は素晴らしい父親。ただ…」アリサ・リュウの“物語”は母国でどう受け止められた? 使用楽曲が再ブーム、地元アイス店は「生涯無料」に<Number Web> photograph by Asami Enomoto / JMPA

ミラノ五輪で2つの金メダルを獲得した米国のアリサ・リュウ。その波乱万丈な競技人生は母国でどのように受け止められたのだろうか?

 父アーサー・リュウは、中国で生まれ、若い頃に政治的混乱の時代を経験し、アメリカへ渡った移民だ。体制の不安定さが社会に色濃く残る時代を経て成長した世代とされる。

 アメリカは移民にとって希望の国であると同時に、競争の国でもある。成功しなければ沈む。努力しなければ埋もれる。その感覚は、特に第一世代の移民には強い。

 アーサーは代理母による出産を選び、5人の子どもを育てるシングルファーザーとなった。

娘のスケートに「100万ドル」を投じた父

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 娘アリサのスケートキャリアには約100万ドル(1億5000万円)を投じたと報じられている。コーチ選定に関与し、練習を数値化し、管理する。それは単なる“厳しさ”ではないのかもしれない。不確実な社会を生き抜いてきた父の、防衛本能にも近い。

 中国で体験した「管理される側」の社会。アメリカで選んだ「管理する側」の子育て。偶然に未来を委ねない。成功は設計するもの。いわゆる「Tiger parenting」とも形容される、成果を厳しく管理する育て方は、アジア系移民家庭の文脈で語られることが多い。

 だがその根底にあるのは、恐怖でも支配でもなく、“保障”への渇望だろう。失うことの恐ろしさを知る世代が、子どもに安定を与えようとする。その延長線上に、アリサ・リュウという神童がいた。

 リュウは『CBS』が放送するドキュメンタリー番組『60 Minutes』でこう語っている。

「彼は素晴らしい父親。ただ、(引退する)以前ほど関与してほしくはなかった」

 否定ではない。拒絶でもない。断絶でもない。それはアリサが引いた境界線だったのだろう。父の努力を否定せずに、自分の呼吸を取り戻す。その微妙な距離感を米メディアは繰り返し強調した。移民家庭の成功物語を壊すのではなく、更新する物語として。

【次ページ】 フリーでの使用楽曲が…再ブームに!

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