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「自国選手を高くするのは“当たり前”」アメリカで大論争…五輪アイスダンスで起きた“不正採点疑惑”は真実なのか? 取材歴32年の記者が徹底検証
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田村明子Akiko Tamura
photograph byJIJI PRESS
posted2026/02/21 17:03
ミラノ五輪アイスダンスで銀メダルを獲得したチョック&ベイツ(米国)
フランスチームへの風当たりが強い“もう一つの理由”
実はこのフランスチームに対する反感が米国で強いのには、スケート以外の理由もあった。シゼロンの以前のパートナー、ガブリエラ・パパダキスが五輪の直前にフランス語で自伝を出版。その中で、シゼロンは支配的なパートナーで、彼から精神的な虐待を受けてきたと告発したのである。
だが筆者は、彼ら2人を子供の頃から取材してきたレキップ紙のフランス人記者から直接、全く別な話を耳にした。
支配的な母親に育てられたパパダキスは精神的に不安定で、シゼロンがずっと彼女を庇いながらパートナーシップを維持させてきたこと。パパダキスが怪我で入院中、シゼロンは毎日のようにお見舞いに行ったのに、なぜか彼女の主張では一度も来ていないことになっていること。新パートナーと組んだシゼロンを、彼女は恨んでいること。
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これらが事実だとすると、自伝に書かれた内容について弁護士に対応させると言ったシゼロンは、濡れ衣を着せられてとんだ災難を被ったことになる。
「このスポーツのためにならない」
米国スケート協会の採点調査要請に対し、ISUは「判定に問題はなかった」と公式に返答。米国側はこれ以上の抗議は行わないと発表した。
マディソン・チョックは「観客が混乱する結果は、このスポーツのためにならない」とコメントをした。
だがそのチョック自身、2023年の埼玉世界選手権ではフリーで転倒しながらも、優勝している。この時2位のイタリア、3位のカナダともノーミスの演技だったが、彼らの間から抗議の声は出なかった。
五輪シーズンに発生する「アームチェア評論家」たち
フィギュアに限らず、人間が採点を行う採点スポーツでは、全ての人が納得する判定というものはほとんどない。どの選手も、有利な判定をもらうこともあれば、逆に納得のいかない採点をされることもある。ほとんどの選手は潔くそれを覚悟した上で、このスポーツに人生を懸けている。
4年に一度の五輪のたびに、大勢の「アームチェア評論家」が現れて「誰もが納得のいく採点を」と叫ぶ。
だが32年間このスポーツを取材してきた筆者でも、誰からも異議が出ない判定結果など、数えるほどしか思い出せない。それを吞み込んでも、フィギュアスケートというスポーツには深い面白さがあることを、理解してもらいたい。

