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「自国選手を高くするのは“当たり前”」アメリカで大論争…五輪アイスダンスで起きた“不正採点疑惑”は真実なのか? 取材歴32年の記者が徹底検証 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2026/02/21 17:03

「自国選手を高くするのは“当たり前”」アメリカで大論争…五輪アイスダンスで起きた“不正採点疑惑”は真実なのか? 取材歴32年の記者が徹底検証<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ミラノ五輪アイスダンスで銀メダルを獲得したチョック&ベイツ(米国)

 冒頭のツイズルの部分で(米国側の抗議の一つは、シゼロンがここでミスをしたのに減点されていないというものだ。シゼロンはツイズルの最後でフリーレッグが少し早目に氷についたが、ボードリーがレベル4、彼はレベル3と、きちんと減点を受けている。マイナスGOEが出るようなミスではなく、「ミスしたのに罰されなかった」というのは事実ではない)フランスジャッジはプラス3のGOEをつけたが、他にプラス3をつけたジャッジが2人、より高いプラス4をつけたジャッジが2人いる。

 コンポーネンツでは、フランスジャッジは構成とパフォーマンスで10点満点を出したが、構成では他に1人、パフォーマンスは他に3人のジャッジが同じようにフランス組に10点満点を出している。

アメリカへの“不当に低い採点”はあったのか?

 次にアメリカのチョック&ベイツへの採点を見てみる。フランスジャッジは構成、パフォーマンス、スケーティング技術の3部門で、いずれも9.50を出した。だが構成では他に3人のジャッジも9.50、スケーティングでは他に4人が9.50、さらに低い9.25を出したジャッジが2名いる。

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 フランスジャッジのアメリカへの採点が全ジャッジの中で一番低かったのはパフォーマンスの9.50のみで、最終平均値の9.82よりも0.32低い。だがこれは試合後に行われるジャッジのミーティングでの審議の対象にもならない、許容範囲である。

 かつてあった、2つの基準で勝敗を決めた6点満点方式と違い、現在は一つ一つの技に対する細かい採点が求められる。フランスチームが勝つためにどのくらいの点差が必要か、本当にフランス人ジャッジが演技を見ながら計算をして、他のジャッジがどのような数字を出すのか予測しながら、制限時間内に必要な数字を細かくモニターに叩きこんでいったのだとしたら、彼女は数学の天才に違いない。

自国選手への多少のプッシュは当たり前

 元々ジャッジが自国の選手に可能な範囲で高い点をつけるというのは、このスポーツでは当たり前のことだ。

 もちろん演技の内容に見合った範囲内でだが、出場者が似たようなレベルなら成長過程を見てきた自国の選手がより良く見えるというのは、人間なら当たり前のことではないかと思う。

 今回のアイスダンスのフリーの採点を見ても、カナダのジャッジは総合10位だったカナダの2番手チームに1人だけ4位をつけているし、スペインのジャッジは総合9位だった自国チームを5位に、イタリアのジャッジは総合4位だった自国チームを3位にしている。この程度の「プッシュ」は採点競技では想定内のことで、いちいち「不正疑惑」にしていたらきりがない。

【次ページ】 自国選手への低評価は日本だけ?

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