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「自国選手を高くするのは“当たり前”」アメリカで大論争…五輪アイスダンスで起きた“不正採点疑惑”は真実なのか? 取材歴32年の記者が徹底検証
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田村明子Akiko Tamura
photograph byJIJI PRESS
posted2026/02/21 17:03
ミラノ五輪アイスダンスで銀メダルを獲得したチョック&ベイツ(米国)
自国選手への低評価は日本だけ?
余談ながら、長年このスポーツを取材してきた筆者の観察では、自国の選手に他のジャッジより低い目の採点をするのは日本人ジャッジくらいのものだ。
日本人特有の謙虚さなのか、あるいはバイアスを疑われることを恐れるあまりの保身意識なのかはわからない。だが自国ジャッジの後押しゼロでこれだけの結果を出してきた日本の選手はすごい、と常々思っている。
トップ争いをする選手の国のジャッジは、パネルに入れるべきではないという意見もある。だがメダル候補の国のジャッジを全員はずすとなると、経験の浅い、フィギュアが盛んではない国のジャッジばかりでオリンピックメダリストを決めることになる。それはそれで必ず弊害が出てくるだろう。
元選手たちが匿名を条件に答えたこと
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次にフランスとアメリカの実際の演技の内容を比べてみよう。
2名の元選手が、匿名を条件に取材に応じてくれた。元オリンピック選手Cさんは、「私の目から見たら、(メダル争いは)フランス vs.カナダ(銅メダル)、アメリカ vs.イタリア(総合4位)だったと思います」とコメント。確かに今回銅メダルだったカナダのパイパー・ギルス&ポール・ポワイエのフリーは素晴らしい演技で、彼らが2位でも良かったという意見もスケート関係者の間では少なからず聞かれた。
また現在コーチとして活躍する元アイスダンサーのAさんは「ノーミスはアメリカでしたが、スケート本来の膝の柔らかさ、グライディング(スケーティングのエッジの乗せ方)が優れているのは、フランスかと思いました」と説明してくれた。
シゼロンのスケートは何が評価されている?
2022年北京五輪チャンピオンのギョーム・シゼロンは、現在・過去を合わせたアイスダンサーの中でも最高のスケーティング技術を持っていると評価する関係者もいる。ちなみに今回男子シングルで銅メダルを手にした佐藤駿も、彼にスケーティングの指導を受けている。
ボードリーとは昨年組んだばかりの新チームながら、ベテランの実力者同士、短期間で驚くほどの進歩を見せた。
昨年10月にアンジェで開催されたフランスGP大会で、初めて彼らを生で見た。映画「ザ・ホエール」のサントラを使った彼らのフリーは、まるで海辺に打ち寄せる波に、時間を忘れて見惚れるような体験だった。
長身のシゼロンはボードリーの滑りとシンクロさせるために膝を深く折り曲げ、足首を柔らかに駆使して深いエッジを使って滑る。演技の間、観客たちは呼吸することを忘れ、音楽が終わると同時に会場は天井が抜けそうな歓声に包まれた。
名古屋GPファイナルではボードリーが衣装に躓いて転倒し、この演技を日本のファンの前で見せられなかったのは残念だった。

