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「30分で直して」と言われることも? 絶望のケガからスーツ職人に…ジャンプ日本代表を支える28歳の職人が驚かされたトップ選手「異次元の超感覚」秘話
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by(L)Kiichi Mastumoto / (R)JMPA
posted2026/02/13 17:01
ミズノでジャンプ競技のスーツ製作に携わる尾形優也(左)。“レジェンド”葛西紀明らトップ選手の「超感覚」に驚かされることもあるという
2020年11月、研修で最初の1着を作り終えてからわずか4カ月後、尾形は早くもW杯に出場する男子代表の遠征に同行した。
メンバーは伊東大貴や小林陵侑、中村直幹らジャンパーとして仰ぎ見るような存在だった選手たち。しかも尾形はスーツ担当としてはもちろん、ヨーロッパに行くことも初めてだった。
「たぶん選手はめっちゃ不安だったと思います。おろおろしないように自信を持って振る舞ってはいましたけど、僕ともう一人、外国人の縫製担当スタッフがいて『どっちが作業するの?』と確認されたり、言葉に出さなくても感じるところがありました。何年か経って言われましたよ。『最初の年はお前にスーツ渡すの怖かった。選手としてのお前は知ってるけど、スーツスタッフとしてはわからないから勇気が必要だった』と。まあ、それを伝えてくれるってことは、今は信頼してもらえてるのかなと思います」
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その頃から常に心がけているのは、「スーツのプロフェッショナル」として、どんな選手にも対等な立場で、自信を持って向き合うこと。現役時代には雲の上の存在だった葛西紀明や伊東大貴のような大物でもそれは同じだ。
「スーツの知識は自分の方がある」…職人の矜持
「彼らの方が選手としてはすごいけど、スーツやルールの知識は自分の方が絶対にある」
そんな矜持がスーツ職人としての尾形を育て、支えてきた。
昨年の国内大会では、葛西から「股下検査に通らないから直してくれ。あと30分でお願い!」と無茶ぶりされたことがあった。各部位の調整が必要になる複雑な作業だったが、超短時間でやり通して送り出した。それも信頼関係があればこそのオーダーであり、経験があるからこそ応えられたリクエストだった。

