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東大卒60歳日本人が「瀕死の街のシンボル再建を」なぜオランダのサッカークラブに経営参画したか「ギャンブル的予算ではなく…」意図を明かす
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2026/02/02 11:02
東京大学を卒業し、長年日本サッカーに携わった人物に聞く「オランダ2部クラブ経営参画」の背景とは
「実際に財政破綻しかけた時期があり、地元の有志である若者・企業家たちが、瀕死の状態にあった街のシンボルを救い出したという経緯があります。そこで私が『今後のことを中・長期的に、生き残って成長戦略を描けるように』と提案し、そのストーリーに彼らが乗ってくれた。非常に優秀な経営者ばかりで、1年ぐらい時間をかけてお互いの距離を詰めながら経営参画に至りました」
――意思決定はシンプルにしなければいけないと思います。
「私も出資者のひとりですが、個人でスポーツビジネスに携わる日本の投資家さんもいらっしゃる。日本側の執行パートナーの経営責任者として、相手側とどう提携していくか。むこうがイエスでこちらがノーだったり、逆でも関係が瓦解してしまう。そうはならないように配慮しています。ゲームの原則でいえば、お互いが常に不合意を秘めた形で経営がされることになります。自分もこれまでの経験に基づいて考えた末に、何年か後にさらにイニシアチブを取るのか、一歩退いた方がいいかを判断するときが来るかもしれない。
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歴史のあるクラブですが、われわれからするとスタート地点にも達していない。そこに至るまで、あるいはさらに浮上していく段階において、合意形成していくスキームを作り上げていく。またメディアやファン、スポンサー、行政と多くのステークホルダーがいる中で、それぞれが得意なところで現実と向き合う。それがベターということで合意に至りました」
予算規模は5~18億円付近の中で
――その中で重点的に取り組んでいることは?
「現在、力を注いでいるのは、パートナーとの距離をしっかりと保つこと。それから日本が中心になりますが、ローフローできないビジネスの展開、クラブ収支を強化するために種を蒔いていくことです。1部昇格、ヨーロッパカップ出場は考えていません。自分はもう還暦なので、10年後に現場に立っているかどうかわかりませんが、少なくともスタートは切れたと後で思えるようなスパンで考えています」
――オランダは2部までがプロリーグで、3部以下はアマチュアのため、2部と3部の間に降格・昇格はない。そこがメリットだと仰っていましたが、予算規模を見ると300万ユーロ(約5億5000万円)から1000万ユーロ(約18億1500万円)の間にほぼ収まっています。アヤックスユースだけが1800万ユーロ(約32億9600万円)と突出していますが、経費を抑えられることはアグレッシブに経営する意欲を削ぐことにもなりませんか?
「降格がないのはアメリカ的な合理性というか、スポーツビジネスを安定させるうえで大きい。一方で3部でも2部より予算規模の大きなクラブもありますし、“落ちないんだから努力しなくともいいよね”という発想もあると思います。とはいえ降格の怖さは肌で体験しています。当初の計画にはなかったお金を使って、監督を替えたり選手補強する必要性が出てくる。それに晒されないメリットは凄く大きいのかなと思います」
――クラブはどんな立ち位置だと認識しているでしょうか。

