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「苦しい」「難しい」藤井聡太と永瀬拓矢が感想戦で何度も…“敗因不明”の王将戦初戦「えっ!」将棋漬けの天才が見せた“意外な一手と目標” 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2026/01/14 06:01

「苦しい」「難しい」藤井聡太と永瀬拓矢が感想戦で何度も…“敗因不明”の王将戦初戦「えっ!」将棋漬けの天才が見せた“意外な一手と目標”<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

“将棋漬けの天才”永瀬拓矢九段は、2日制のタイトル戦で藤井聡太王将相手に初の先勝となった

 過去の藤井とのタイトル戦を振り返ると、勝てるチャンスは何局かあり、勝ち切れていれば五分のフルセットに持ち込めたという。その意味で、藤井とのタイトル戦でチャンスをつかみ取り、叡王と王座を奪取した伊藤匠二冠(23)に尊敬の念を抱いている。自分もそうありたいと――。

 藤井六冠と永瀬九段の公式戦の対戦成績は、王将戦第1局を迎えた時点で藤井32勝、永瀬11勝。今年度の成績は、藤井は27勝7敗(.794)、永瀬は36勝15敗(.706)。藤井は伊藤と永瀬(それぞれ3敗)、豊島将之九段(1敗=35)以外に負けていない。

 一方の永瀬は15敗のうち10敗は藤井戦で、藤井との対戦を除けば勝率は「.868」になる。

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 なお藤井と永瀬の新年の1局目は、1月7日の叡王戦本戦トーナメント1回戦。両者はともに勝利を収めており、2回戦も勝つと準決勝で対戦する。伊藤叡王への挑戦者争いにも注目したい。

敗退続きでも「藤井さんと1局でも多く」

 そんな藤井と永瀬の過去のタイトル戦の戦績は、藤井から見て次の通り。※印は2日制七番勝負。

第93期棋聖戦(22年6月~7月)●○○○
第71期王座戦(23年8月~10月)●○○○
第72期王座戦(24年9月)○○○
第74期王将戦※(25年1月~3月)○○○●○
第83期名人戦※(25年4月~5月)○○○●○
第66期王位戦※(25年7月~9月)○○○●●○

 藤井とのタイトル戦でこれだけ敗退を重ねると、普通は心が折れてしまうものだ。しかし永瀬は「藤井さんといい勝負をして、1局でも多く指したい」と語り、前向きな姿勢である。さらに今期のA級順位戦では6連勝でトップを走り、例年4月に始まる名人戦で藤井名人への2期連続の挑戦を目指している。

 ちなみに昭和の名ライバルだった中原誠十六世名人と米長邦雄永世棋聖のタイトル戦では、中原は7回連続で米長の挑戦を退けた。しかし米長は1979年の王位戦で、苦闘の末に中原を初めて破ってタイトルを奪取した。米長の師匠である佐瀬勇次名誉九段は、「まさに《七転び八起き》の勝利だ。苦しみ抜いたから《七転八倒》かな」と、喜びを語った。

「えっ!」控室が驚いた永瀬の作戦

 話を本局に戻す。王将戦第1局では恒例の「振り駒」が行われ、永瀬の先手番に決まった(持ち時間は各8時間)。

 永瀬は角換わり腰掛け銀の戦型を採った。角換わり以外の戦型は「木刀」で、角換わりは「真剣」の戦いだと形容していた。つまり、抜き身を引っ提げる気持ちで臨んだ。

 前例のある駒組み手順が進んだ後、永瀬は4筋に桂を跳ねて開戦した。そして7筋の桂頭を攻めると、2筋から「継ぎ歩」攻めにいった。飛車と自陣の金を連係して藤井の玉頭を攻める狙い。いわば「棒金」作戦だが、あまり見かけない組み合わせである。

「えっ!」

 控室では驚きの声が上がった。

【次ページ】 「苦しい」「難しい」両対局者が感想戦で何度も

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