第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
《黒田朝日だけじゃない》青木瑠郁、ヴィクター・キムタイ、塩出翔太、佐藤圭汰…記録ラッシュの箱根駅伝で記憶に残るランナーたち
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生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO / Yuki Suenaga
posted2026/01/09 10:01
左から青木瑠郁(國學院大學)、ヴィクター・キムタイ(城西大学)、塩出翔太(青山学院大学)、佐藤圭汰(駒澤大学)
明けて1月3日の復路。
初っぱなから驚かされたのは山下り6区の高速化だ。前回、野村昭夢(当時・青学大)が56分47秒の区間新記録を出した時には、しばらくこの記録は破られることはないと思っていた。
ところが、肉薄する選手が現れた。創価大学の小池莉希(3年)が56分48秒、駒澤大学の伊藤蒼唯(4年)が56分50秒をマークしたのである。さらに57分台も3人、58分台も7人。山下りの高速化が止まらない。
残念だったのは、小池が区間記録に1秒及ばなかったこと。小池は区間賞インタビューでこう答えた。
「この1秒を削りだせないのが小池莉希でして」
小池にはもう一度、チャンスがある。次回も山下りに期待したい。
8区を担った青学大の塩出翔太(4年)には期するところがあった。
「往路が終わったあとの談話で、中大さんや駒大さんが『8区で逆転したい』と話していて、自分はナメられてるんじゃないかと思っていまして」
塩出は過去2大会、この8区で区間賞を獲得している実力者だ。
「往路を走りたい気持ちもありましたが、8区を走るんだったら絶対に区間新を出す、という思いで走り出しました」
塩出は勝手知ったる遊行寺坂を上り、自分の限界に挑戦した。そして、これまでの区間記録を4秒上回る1時間03分45秒をマークし、区間記録保持者として名を刻んだ。
大手町を目指す最後の10区。駒大のアンカーを務めたのは佐藤圭汰(4年)だった。
京都・洛南高時代から将来を嘱望された大器。7区の区間記録保持者だが、今回は12月に大腿骨を疲労骨折し、負担の少ない平坦な10区を走ることになった。
万全ではなかっただろう。しかし、その力は圧倒的だった。従来の区間記録を19秒更新する1時間07分31秒を出し、順位をひとつ上げて6位でフィニッシュした。大手町で佐藤は最後の箱根駅伝をこう振り返った。
「今日のレースに向け、2週間ほどの急ピッチで仕上げなければならなかったので、不安しかなかったですが、最低限の走りが出来て良かったかなと思います。チームが苦しい流れになっていて、自分のところで区間新を出して、なんとか『終わりよければすべてよし』という形に持って行きたいと思っていました。最後に4年生の意地は見せられたかと思います」
21チーム、210人が走った箱根駅伝。歓喜もあれば、失意もあった。だが、区間を問わず走った学生たちの言葉はどこか清々しく、その瞳はすでに未来を見据えている。
陸上競技から引退する4年生もいる。世界を目指して走る選手もいる。そして、2027年の第103回箱根駅伝を目指し、選手たちはすでに走り出している。



