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DeNAを戦力外も現役続行へ「例年以上に練習している」…いまだ所属の決まらない三嶋一輝35歳はなぜ「NPB以外はお断りして」退路を断ったのか
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石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/29 17:01
ベイスターズでの13年間で37勝、56ホールド、42セーブをあげてきた三嶋。NPBでの現役続行を追い求めるわけを語った
いやー、まだやりたいな
「なんかね、『いやー、まだやりたいな、現役』って思っちゃったんですよ。『たしかにいい歳だよなあ』とか『もういいかなあ』ってことはまったく思わずに、それが最初に一番に来たんですよ。だったらここは素直な気持ちに従おうかなって」
三嶋は球団の説明を一旦遮り、断ってから妻に連絡をした。そして現状を説明し、自分の気持ちを伝えた。すると電話の向こうの妻は次のように言った。
「それが素直な気持ちだろうし、そうしてほしい」
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電話を切った三嶋の腹は決まった。すぐに球団関係者に「現役やりたいです」と伝えた。
「自分の野球人生、ここできれいに終わることができたかもしれないけど、一番最初に僕が感じたことに、そのまま素直に挑戦してみようかなって思ったんですよ。これまでそうやって生きてきましたからね」
そう言うと三嶋はいたずらっ子のような表情をして微笑んだ。なにがあろうとも自分の生き方は変えられない。心の奥底にはまだ、燃え盛る炎がゆらめいている。
心のどこかにまだ自分への期待もある
「自分のなかで納得できていない部分があるんですよ。とくに病気をしてからの最後の2年間って、成績はもちろん、先が見えない状況でもがいてもがいて、弱音を吐くこともありました。けどね、心のどこかにまだやれるんじゃないかって自分への期待もあるんですよ。まあ、変に素直じゃないところがあるんで」
言わんとしていることはわかるが、三嶋ほど真っすぐで素直な人間はいない。そして無類の負けず嫌いということも。
構想外を告げられた後のファーム終盤戦。三嶋は3年ぶりに150キロをマークするなど健在ぶりを見せつけた。若手選手に交じり見せるマウンドでの佇まいには誇りが、切れのあるスライダーとフォークには意地が込められていた。
振り返れば三嶋のDeNAでの13年間は、とてもではないが一口で語れるものではない。
「まあ全部やりましたからね。なかなかそれは面白いと思いますよ」
三嶋はまんざらでもないといった表情をした。
〈全3回の1回目/つづく〉

