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「以前の自分とは別人」腰の激痛で“首位打者打法”を捨て…ヤクルト川端慎吾が引退の今語る“代打の神様”への道と2021年「日本一の決勝打」秘話 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2025/12/29 11:06

「以前の自分とは別人」腰の激痛で“首位打者打法”を捨て…ヤクルト川端慎吾が引退の今語る“代打の神様”への道と2021年「日本一の決勝打」秘話<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

ヤクルト一筋20年でユニフォームを脱いだ川端慎吾。絶頂期から、度重なる怪我との戦い、あの日本一の秘話までを回想した

「前の自分からしたら、まるで別人です。変えるのって本当に勇気がいるんですけど、僕にはもうそれしかない、ダメなら野球人生は終わりだと腹を括っていました」

日本一の決勝打秘話

 翌2021年シーズン、覚悟を決めて挑んだスタイルチェンジが花開く。代打としてシーズン30安打を放ち、得点圏打率は実に.421と圧倒的な勝負強さを発揮した。スワローズファンにとって絶対に忘れられないシーンは、オリックスとの日本シリーズ第6戦での一打だろう。延長12回に代打でタイムリーを放ち、それが決勝点となって日本一を決めた。

 あの一打には、知られざる秘話がある。リーグ優勝を決めた10月26日のDeNA戦の打席で、川端は右太腿を肉離れしていた。クライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズで何とか復帰するべくリハビリしたが回復は厳しく、実際には全く動けない状態だったという。

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「さすがに試合は無理だと思っていました。バットは振れても、ファーストまで走れるような状態じゃない。チームにも迷惑をかけるから、出場は難しいという話をしました」

 川端の状態を聞いた高津臣吾監督は、それでも首を横に振った。

「バットを振れるなら、ベンチにいてほしい。ベンチにいるだけで、相手には大きな存在なんだよ。代打でもし、二塁打を打ったとしても一塁まで歩いて行けばそれでいいから」

 指揮官の熱い言葉に打たれた。川端は思わず「よろしくお願いします」と頭を下げていた。

 11月11日、巨人とのCSファイナルステージの第2戦で出番が来た。1点リードの6回、村上宗隆の二塁打などで2死二、三塁。巨人の先発・菅野智之はこの時、代打の準備をする川端の姿を見るや、前打者の西浦直亨を申告敬遠で歩かせた。まさかの敬遠。川端が一塁まで歩けないような状態であることはチーム内の極秘事項だったが、相手に悟られているのではないかと一瞬、動揺したという。

【次ページ】 怪我がバレてるのかな

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