甲子園の風BACK NUMBER
「ルールを破っても罰則なし」「時に二郎系ラーメン」“入寮希望”が多い甲子園V経験校のリアルな寮生活「本音を言えば地元に…」監督らが語る
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間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2026/01/01 11:03
高校野球部の寮生活が思わぬ形で注目された2025年だが……甲子園経験校はどんな生活をしているのか
指導者の役割は、きっかけづくり。グラウンドでも寮生活でも、選手の欲を最大化する指揮官の方針はぶれない。選手たちも、その考え方を理解している。渡辺主将がチームの思いを代弁する。
「甲子園で勝つために自分を律し、意識を高く持つ集団を目指しています。自分たちは自主性を大事にしています。寮のルールを破っても罰則はありません。それは、そういう選手はプレーの質が落ちて、周りから置いていかれると分かっているからです」
寮では定期テスト2週間前から朝1時間、夜2時間の勉強時間をつくっているが、これも強制的に机に3時間向かわせることが目的ではない。もっと時間が必要だと判断する選手は、3時間よりも長く勉強時間を確保する。
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選手をルールで縛りつければ、考える力や自主性を育む機会が損なわれる。だが、自由を与えすぎれば、まだ知識や経験の浅い高校生には判断が難しい局面が増える。ルールと自由は決して正反対の関係ではなく、バランスを取れば相乗効果を生み出す。そして、そのバランスを図り、選手が成長するきっかけづくりが指導者の役割となる。
直面している“人材流出”
地元の球児が憧れる高校に――見据えるのは静岡県の野球界の未来。県内屈指の強豪校として、チーム強化や選手育成の先にビジョンを描いている。
「地元の小・中学生が憧れるチームにしたい思いがあります。静岡県内のトップレベルの中学生たちが県外の高校を選ぶのではなく地元に残り、その中でも常葉大菊川を最優先の選択肢にしてもらえるようにしていきたいと思っています」
静岡県の高校野球界は近年、“人材流出”に直面している。全国の強豪校による青田買いが加速し、静岡県内トップレベルの中学生は県外の高校へ進学する傾向が強まっている。
県内選手を集める難しさは、各高校のメンバー構成にも表れている。今夏に甲子園に出場した聖隷クリストファーはベンチ入り20人のうち県内出身者は2人だけで、レギュラーは全員、県外から来た選手だった。甲子園を狙う他の私立強豪校も事情は大きく変わらない。
本音を言えば、地元に残ってほしいです
石岡監督が正捕手を務めた2007年にセンバツで優勝するなど、甲子園常連校の常葉大菊川であっても選手獲得に苦労している。1、2年生を合わせた現在の部員数は34人で、県内出身者は半数より少し多い19人。他校と比べて県内出身者が占める割合は高いが、石岡監督は「県内で有望な中学生は県外に出ている印象が強いです」と話す。

