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「我々はマクラーレン流で成し遂げた」“セナプロ”など過去の蹉跌を乗り越え「平等」徹底でダブルタイトル獲得の揺るがぬ哲学
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph byMcLaren RACING
posted2025/12/26 17:01
ノリスのタイトル獲得を喜ぶマクラーレンのスタッフたち
その言葉が嘘ではなかったことは、3番手からスタートしたピアストリが1周目にチームメートのノリスをオーバーテイクし、最後まで逆転王座に望みを持ってレースしていたことでもわかる。ピアストリが逆転でタイトルを獲得するには「ピアストリ2位かつノリス10位以下、フェルスタッペン4位以下」あるいは「ピアストリ1位かつノリス6位以下、フェルスタッペン2位以下」という条件があったが、レースをリードしたのはポールポジションからスタートしたフェルスタッペン。ピアストリの希望が遠ざかっていく中、それでもマクラーレンは2人にチームオーダーを出すことなく、最後まで自由にレースをさせた。最終的にフェルスタッペンが優勝、ピアストリは2位となったものの、ポイントで大きくリードしていたノリスが3位でフィニッシュしてチャンピオンを獲得した。
敗れたピアストリはチャンピオンを逃したことに悔しさをにじませたものの、チームの方針は正しかったと言い、こう感謝した。
「確かに困難な瞬間や緊張感はあったが、ランドと僕は互いに限界まで追い込むことで、より優れたドライバーに成長できたと思う。チームは公平にタイトル争いを行う最高の機会を僕たちに与えてくれた。それ以上、何を求めるというんだ」
誇るべきフィロソフィ
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頂点に立ったノリスも、チャンピオンになったことはもちろん、その過程が大切だったと言う。
「初めての王座を自分のやり方でつかんだことが何よりうれしい。良い人間であり、良いチームメンバーであろうとする、自分なりのスタイルで勝ち取ったんだ。そのことを誇りに思う」
その2人を束ねてきたアンドレア・ステラ代表は、こう言って胸を張った。
「ドライバーズチャンピオンのタイトルはシーズンごとに1人のドライバーしか獲得できない。われわれの理想を実現することは簡単ではなかったが、われわれはマクラーレン流で成し遂げた。マクラーレンの全員が自分たちの文化に忠実であり続け、驚くべき結束力を示した。この成功でみんなの努力が報われたことを心からうれしく思う」
18年前と36年前に味わった後味の悪さ。その記憶を、マクラーレンは自らの手で拭い去った。

