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「我々はマクラーレン流で成し遂げた」“セナプロ”など過去の蹉跌を乗り越え「平等」徹底でダブルタイトル獲得の揺るがぬ哲学

posted2025/12/26 17:01

 
「我々はマクラーレン流で成し遂げた」“セナプロ”など過去の蹉跌を乗り越え「平等」徹底でダブルタイトル獲得の揺るがぬ哲学<Number Web> photograph by McLaren RACING

ノリスのタイトル獲得を喜ぶマクラーレンのスタッフたち

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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 マクラーレンのランド・ノリスが初のチャンピオンに輝いた2025年のF1は、その戦い方に注目が集まったシーズンでもあった。マクラーレンの戦い方には、これまでチャンピオンを生み出してきたほかのチームが採ってきた定石とは異なるフィロソフィが存在していたからだ。

 マクラーレンが25年シーズンに掲げたチーム方針は、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリの2人のドライバーを可能な限り平等に扱うというもの。イタリアGPでは2番手を走っていたノリスがタイヤ交換作業のロスでピアストリに逆転されると、チームはコース上でのポジションの入れ替えを指示するほど、平等性は徹底された。

平等に伴うリスク

 その戦い方は、機能すれば理想的だ。だが、実際に2人のドライバーを平等にコントロールするのは簡単ではない。例えば、ピットストップ作業は1台ずつしか行えないため、最適なタイミングでピットインできるのはどちらか1台となる。

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 また、マシンの開発面でもリスクが伴う。最新のパーツを2台用意するには、1台分作るよりもコストがかかるからだ。現在のF1はコストキャップ制が導入されているため、費用対効果という点だけを考えれば、どちらか1台を優先したほうが有利になる。

 過去を振り返れば、タイトルを獲得してきたチームは、どこかの段階でチャンピオンになる可能性の高いほうのドライバーを優先してきた歴史がある。今年、最終戦までチャンピオンシップ争いを繰り広げたレッドブルは、その最たるチームだった。現役最強と言われるマックス・フェルスタッペンを中心にチームを作り、新しいパーツはフェルスタッペンを優先して投入。さらにチームメートには、時に自分の予選アタックやレースを犠牲にしてでもフェルスタッペンを援護することを求めた。

 しかし、マクラーレンはフェルスタッペンに迫られながらも、どちらか一方のドライバーを優先することはしなかった。そこには、マクラーレンが経験した2度の挫折が大きく関係しているように思う。

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