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プロ野球PRESSBACK NUMBER
広岡達朗が言った「あんなことができるのは星野仙一しかいない」ヤクルト初優勝のウラに“まさかの直球勝負”「星野さんのボールの握りが見えたんです」
posted2025/12/22 17:02
「打倒巨人」に執念を燃やした中日・星野仙一。1978年、そんな星野と初優勝を目指すスワローズナインの思いが交錯した試合があった
text by

長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
KYODO
杉浦享の証言「星野さんのボールの握りが見えたんです」
この年のスワローズ打線を象徴する試合がある。
9月19日から21日にかけて、静岡・草薙球場、神宮球場で行われた中日ドラゴンズとの4連戦だ。19日、静岡でのダブルヘッダー2戦目、20日、21日の神宮での試合で三夜連続サヨナラ勝利を飾ったのだ。その主役となったのが杉浦である。
「3試合連続サヨナラ勝ちのことはよく覚えていますよ。本当にすごかったから。でも、実は静岡の試合ではオレのチョンボで1点を取られているんですよ。記録はエラーになっていないんだけど、捕れそうなボールをポロッとやって落としてしまった。だから、船田(和英)さんのサヨナラホームランは本当に嬉しかったんです」
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翌20日は、9回表を終えて0対2で敗色濃厚だった。しかし、大杉勝男、マニエルの連打で無死一、三塁のチャンスを作ると、杉浦に打順が回ってきた。
「相手投手は星野(仙一)さんでした。このとき、星野さんのボールの握りが見えたんです。バッターボックスの中で、“えっ、ストレート? この場面、普通はスライダーだろ?”と思いながら、ストレートをスイングしたらスタンドイン。スリーランで逆転サヨナラ勝利。で、次の日もレフトへ犠牲フライでサヨナラ。この場面もライトではなく、初めからレフトフライを狙っていました。これは昔、三原(脩)監督時代に、“バットを内側から出してレフトに打つことを覚えなさいよ”と言われたことが役に立ったんです」
興味深い証言がある。船田がサヨナラホームランを打った19日、そして杉浦が試合を決めた20日、いずれもドラゴンズのマウンドに上がっていたのは星野だった。

