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ドジャースのコーチ補佐が称賛「細かいところまで徹底している」山本由伸が続ける“自作ノート”にある変化…ルーティーンから分かった「成功のヒミツ」
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斎藤庸裕Nobuhiro Saito
photograph byGetty Images
posted2025/12/23 06:03
独自のルーティーンが山本由伸の成功を生んでいた
今年のポストシーズンでは、リーグ優勝決定シリーズのブルワーズ戦がそうだった。アメリカン・ファミリーフィールドで行われた第2戦、山本は試合前の投球練習でブルペンに向かった。球団スタッフがあらかじめ自作で引いた2本の白線。バッターボックスを可視化し、本拠地ドジャースタジアムと同じように投球練習を行った。工夫をこらした練習にコナー・マクギネス投手コーチ補佐は「彼は打席をビジュアル化することを好んでいる。集中力も高まるようだ。とにかく細かいところまで徹底している。本当にすごい」と称賛。この日、山本は9回1失点完投でチームを勢いづけた。
登板日の試合前だけではなく、登板間の調整でも妥協しない。7月26日、レッドソックスの本拠地ボストンで、登板2日前のブルペン投球を行った。当時は、四角くカットされた“持ち運び可能なバッターボックス”を設置して、山本の練習が行われる約2時間半前に、園田通訳が1人、ブルペンで準備を行っていた。周囲のサポートもあり、持ち味の精密さが保たれた。
メジャー2年間、ドジャースタジアムでは6勝5敗、防御率3.38、敵地では13勝5敗、防御率2.11。今年9月6日、オリオールズ戦で9回2死までノーヒット投球を続けたのも、敵地ボルティモアでの登板だった。
“自作のノート”にもある変化があった
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もう1つ、登板中のルーティンにも工夫をこらしたことがある。シーズン終盤から、ベンチ内で山本が自前ノートを確認する姿が目立つようになった。
「いつも裏の(打撃)ケージで見ていたんですけど、敵地とかだと同じポジションをとれない時があるので。ケージの場所が遠かったりして。だから、いつも一緒のところでできるように、こっち(ベンチ)がいいかなって」
相手打者の対策や特徴を忘れないよう、オリックス時代から続けている自作のノート。その“置き場所”を変えた。これまでは攻守交代でベンチに戻ると、イニング間でダグアウト裏へ引き揚げ、打撃ケージで見ていたという。だが球場によっては、距離があり、時間がかかることがある。仮に味方の攻撃がすぐに終わってしまえば、確認作業の時間がとれなくなる。だから、いつでも手にとれるよう、ベンチに場所を変えた。ルーティン1つでも、細部にこだわる――。結果的に、バッテリーを組む捕手や投手コーチらとノートを手にゲームプランを確認することも可能になった。

