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「趣味はバイクトレーニングと釣り」CBR1000やCRF250を所有する練習の虫・小椋藍が市販レーサーでトレーニングに励む理由
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/12/19 17:01
モタードでトレーニングを行う小椋
バイクトレーニングには怪我がつきもので、その影響でレースを欠場するというケースも少なくない。藍も23年シーズンの開幕前に行ったモトクロストレーニングで左手首を脱臼骨折した。チャンピオン獲得が期待されたシーズンだったが、この怪我の影響でシーズン前半は思うような結果を残せなかったという苦い思い出がある。
藍が海外でレースするようになって11年が過ぎ、そのうちグランプリでは8シーズンを過ごしたが、藍の活躍を支えているのがバイクトレーニングであることは間違いない。しかし、MotoGPクラスに出場した25年シーズンは怪我が続いたこともあり、シーズン中のバイクトレーニングの機会は少なかった。前半戦のイギリスGPで右膝を負傷して決勝と次戦アラゴンGPを欠場。後半戦のサンマリノGPでは転倒し右手を負傷した。次の日本GPで復帰するものの、手の状態が悪くなって決勝と次戦インドネシアGPを欠場……と、怪我の影響が続いたシーズンだった。
MotoGPマシンは速度域が高いだけに転倒したときの身体のダメージも大きい。もともと骨折しやすく治りが遅い体質の藍は、シーズンを通してもっとも大事なレースのひとつである日本GPの決勝を走れず「ファンに申し訳なかった」と辛い思いをした。そのため最近は食事にも気を遣うようになり、骨折しにくく治りが早いようにと「好き嫌いのない食事」に気をつけている。
神出鬼没のバイクトレーニング
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今年はこれまで通りバルセロナを拠点にレース活動を行ったが、怪我が続いて思うようにバイクトレーニングをする体制を作れなかった。そこで来季は父・正治さんのサポートがあり、バイクトレーニングの準備が整っている日本を拠点とし、レースとレースの合間で徹底的に走る予定にしている。
藍は「自分でクルマを運転して練習にいけるように」と18歳になってすぐクルマの免許を取得した。それまでは両親の運転で練習場に向かっていた藍は、練習用のバイクを積むためハイエースを購入。その後、さらに大きいフィアットのデュカトも購入して、遠くに遠征もできるトランポ2台体制とした。トランポの中にはバス釣りなど大好きな釣り道具も積んであって、練習で遠出すると「趣味はバイクトレーニングと釣り」という藍は至福の時間を過ごすことになる。
帰国後の藍は日本中のサーキットやモトクロス場に神出鬼没に現れ、みっちり走り込んで帰って行く。一緒にトレーニングする後輩たちの見本になり、偶然同じコースを走ることになった一般のライダーたちにとっても大きな刺激になっている。
来季はMotoGPクラス2年目。「表彰台に立たないとだめでしょう」と語る藍だけに、今日もどこかで黙々と走っているに違いない。

