大会出場の秘策は…まさかのバスケ部!? 高校駅伝の女王・長野東「部員は3人だけ」衝撃の黎明期を振り返る　全国出場は「嬉しかったけど、それよりも…」 

　アンカーを務めた西澤千春も区間2位の快走を見せたものの、順位は変わらず5位でのフィニッシュとなった。ただ、当然ながら選手たちに悲壮感はなかったと小田切はいう。

「むしろ初めて高校駅伝でタスキをつなげたという喜びが大きくて。本当に、走り終わった後は協力してくれたバスケ部の先輩2人への感謝の気持ちしかありませんでした」

　美春もこのレースが大きな自信になったと振り返る。

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「もともとトラックでも結果を出していた亜希が強いのは分かっていましたけど、自分も区間新記録で走れて『私もこんなに強くなっているんだ』と実感できたんですよね。玉城先生からも『半分までは全国大会だったなぁ』と言ってもらえて。それまでは親元を離れての生活への順応や練習でいっぱいいっぱいだった部分もあったんですが、この年の駅伝を経て、ようやく都大路が具体的にイメージできるようになった気がします」

　そしてこの結果は、その順位以上に大きな意味を持つことになる。

知られ始めた「長野東が強そう」という評判

　県下でも全く名が知られていなかった公立校の1年生トリオが突如、驚異的な走りを見せたのだ。そのレースの衝撃は、県内の有力中学生たちにも顕著に伝わった。玉城が言う。

「県内で陸上に力を入れている子からすれば、普通に考えれば『これからは長野東が来そうだ』というのが分かるわけです。有力な中学生たちの練習会とかでもお互いに『どこに行くの？』という話はするじゃないですか。そういう中で、自然の流れで選択肢に入りやすくなったんでしょうね」

　もちろん公立校という立場もあり、いわゆる強豪私学のような積極的な勧誘活動ができるわけではない。だが、県の強化記録会や都道府県対抗駅伝などにはスタッフとして玉城や、長野東の選手も参加する。そんな中で表立った勧誘をせずとも、少しずつチームの空気感も伝えることができていた。

　結局、翌2007年の4月には、4名の新入部員が入部する。

　本格的な競技は高校からという部員もいたが、中には全国大会への出場実績のある選手もいた。こうして小田切たちが2年生になった年、ようやく陸上部員だけで駅伝メンバーが組めるようになったのである。

1年生が4人加わり、7人となった部員は後に長野東初の全国高校駅伝出場を決めることになる／取材対象者提供

　まだ部員は1、2年生だけだったとはいえ、玉城からすれば2年続けて県のトップ級が入ってきたのだ。本人の意思はともかくとして「都大路も『行ける』とかじゃなくて、『行かなくちゃおかしいだろうな』とは思うようになりました」。

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