大会出場の秘策は…まさかのバスケ部!? 高校駅伝の女王・長野東「部員は3人だけ」衝撃の黎明期を振り返る　全国出場は「嬉しかったけど、それよりも…」 

　と同時に、この2人の参画は予想外の好影響を部にもたらすことになる。小田切が振り返る。

「もちろん『これで駅伝に出られるんだ』という安堵はありました。でも、それ以上に先輩たちの取り組み方がすごくありがたかった。記録が伸びれば素直に喜ぶし、楽しいながらも『練習がキツい！』というのも素直に口に出してくれて（笑）……そういうのがすごく新鮮だったんですよね」

　小田切も西澤姉妹も、都大路を目指すと覚悟を決めて長野東高校へと入学してきていた。

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　それゆえに実績ゼロの公立校という環境の中で、一刻も早く夢舞台に近づこうと日々、自身を追い込んでいた。もちろんそれゆえの楽しさもある一方で、そんな生活が半年も続けば、少しずつ心の摩耗が起きるのも当然ではあった。

　そんな中で期せずして「陸上素人」の先輩2人の頑張りに触れることができた。タイムが伸びれば素直に喜び、練習で走る楽しさを全身で表してくれる。それは、シンプルに3人のモチベーションを上げるきっかけにもなった。美春も振り返る。

「とにかく明るい先輩たちで、玉城先生にもすごいフランクに接していて（笑）。私たちからすれば監督なので、ともすればちょっと距離感もある中だったので、見ていて楽しかったです。しかも専門外の陸上をこんなに頑張ってくれている。じゃあ、自分たちも頑張らないと……と素直に思えました」

「まさかの助っ人」への感謝を語る西澤美春さん　©NumberWeb

　こうして陸上部3人に元バスケ部2人を加えた5人で、長野東は県高校駅伝へと参加することになる。後に全国入賞の常連となり、2度の全国制覇を達成する“駅伝女王”の初陣は、少々イレギュラーな形で幕を開けることになった。

2区までまさかの大逃げも…“助っ人”で失速

　11月に行われた県高校駅伝は、2区までは独走の展開だった。

　高校女子駅伝は6キロ→4.0975キロ→3キロ→3キロ→5キロの5区間計21.0975キロの距離で争われる。

　1区でいきなり小田切が2位に1分近く差をつける快走を見せると、2区を走った西澤美春も区間新記録で後続を突き放す。3区にタスキが渡った時点で、2位に1分以上の差をつける大逃げを繰り広げていた。監督の玉城が振り返る。

「もう最初はぶっちぎりでしたよ。でも、3区と4区がバスケ部の“助っ人”だったので、さすがにそこからどんどん抜かれていきましたね（笑）。結局、4区終わりで5番まで落ちちゃったのかな」

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