第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「練習通りの力を見せたい」控えめな言葉に自信をにじませる青山学院大学のエース黒田朝日が狙う「箱根駅伝2区64分台」の新記録
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byShiro Miyake
posted2025/12/26 10:01
11月の全日本大学駅伝でエース区間の7区を担った黒田朝日。箱根駅伝でも3年連続でエース区間の2区を走る
最終学年となった今回は、自身の記録をさらに更新することが期待される。なぜなら、この1年間で黒田の走力は着実に向上しているからだ。印象的なものとして今季の2レースが挙げられる。
・2月24日大阪マラソン/6位 2時間06分5秒(日本学生新記録)
・11月22日MARCH対抗戦10000m/優勝 27分37秒62(青学大記録)
フルマラソンでは先輩の若林宏樹(卒業後引退)が持っていた記録を塗り替え、10000mではレース序盤の落ち着かない流れにしっかりと対応し、青学大記録を樹立した。このふたつの記録だけでも地力がしっかり高まったことが窺え、箱根駅伝2区でのタイム向上に期待が高まる。
今回、黒田が3年連続で2区を走るとなれば、前回リチャード・エティーリ(東京国際大学)が樹立した1時間05分31秒の区間記録の更新、さらには1時間04分台への突入も夢ではない。黒田自身もそれをしっかり意識している。
「前回のタイムのことを考えるなら、走力は上がっているので区間新は視野に入ってきますし、64分台の可能性も考えています。ただ、全体としての記録は気象条件とかコンディションに左右される気がしますね」
となれば気象条件に恵まれることを祈るばかりだが、青学大が3連覇を達成する確率を上げるためには、2区で待つ黒田がどれだけいい位置でたすきを受けとるかも重要になる。1区で先頭、あるいは先頭が見える位置ならば、黒田が往路の主導権を握るはずだ。
絶大なる信頼感
あるいは万が一、青学大が1区で出遅れるようなことがあったとしても、黒田が流れを引き戻す役割を果たすはずだ。とにかく黒田は「外さない選手」。どんなレースでも期待を裏切ることがなく、確実に成果を出す。この信頼感があるからこそ、チームメイトは安心して走ることが出来るのだ。
「今季はキャプテンとして、走りでチームメイトを引っ張ってきたつもりです。でも11月、12月とメンバーそれぞれが自覚をもって練習に取り組んでいるのが伝わってきたので、安心して当日を迎えられるはずです。やはり練習以上の走りは出来ませんが、練習通りの力をお見せしたいです」
1年生の時、淡々と話していた青年が、3年を経て力強い言葉で目標を語り、周りから信頼される存在となる。大学生活における成長もまた箱根駅伝の魅力のひとつ。
最後の箱根駅伝を走り終えた時、黒田はどんな言葉を残すだろうか。


