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井上拓真の“エグいアッパー”で那須川天心の顔面が…カメラマンがとらえた決定的瞬間「ボクシングをなめるな」“ブーイングも飛んだ”現地ウラ側―2025年下半期読まれた記事 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2025/12/26 17:00

井上拓真の“エグいアッパー”で那須川天心の顔面が…カメラマンがとらえた決定的瞬間「ボクシングをなめるな」“ブーイングも飛んだ”現地ウラ側―2025年下半期読まれた記事<Number Web> photograph by Susumu Nagao

井上拓真とのWBA世界バンタム級王座決定戦に敗れた那須川天心。長く天心を追うカメラマンは何を感じたのか

 思い出したのは、エキシビションでフロイド・メイウェザー・ジュニアに圧倒されたとき(2018年12月31日)のこと。まるで歯が立たず、感情的にもボロボロになっていたあのときの天心選手と比べて、今回は負けを謙虚に受け入れていた。もちろん言葉にならないほど悔しかったと思いますが、それでも前を向く姿に成長を感じましたし、「まだまだ伸びしろはある」という印象を抱きました。

 試合の展開も、会場の雰囲気も、ここまでの逆風は彼にとって初めてだった。ただ、こうして本当の強敵に敗れたことで、自分に足りないものを突き詰めて考えるきっかけになったでしょうし、チームとしても何が必要か理解したはず。無敗という肩書きに縛られることもなくなった。天心選手は賢いし、努力を怠らない人間ですから。今回の負けは、彼がさらに強くなるために必要なものだったんじゃないか、というのが私の考えです。

「井上尚弥やメイウェザーはどれだけすごいんだ」

 そして、いつもMMAやキックボクシングを中心に撮影している者からすると、「ボクシングってすげえな」と痛感しました。井上拓真という一流のボクサーが持つ多彩な技術、戦略の的確さ、加えて今回の試合にかける思いの強さ……。そんな拓真選手でさえ、すこしの緩みで堤聖也選手に負けた。あらためて、すごい世界だなと。プロアマを含めた競技人口や共通のルールなどさまざま要因があると思いますが、やはりその蓄積、歴史はウソをつかない。「最高峰のレベルで全勝を続ける井上尚弥や、全勝のまま引退したメイウェザーはどれだけすごいんだ」と途方もない気持ちになりました。いまさらながら、ボクシングファンになっちゃいましたね(笑)。

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 異なる競技からそんな世界に飛び込んだわけですから、簡単じゃないことは天心選手が誰よりも理解しているはずです。先々のことを考えたら、むしろサクッとベルトを取るよりもよかったんじゃないかという気がするんですよ。今後どんなボクサーになっていくのか、スタイルは変わるのか……。個人的には「これからの天心」が楽しみになりました。

 つくづく、格闘技も人生も予定調和とはいかない。でも、「だから面白いんじゃないですか」と那須川天心なら言いそうな気がします。

(構成:曹宇鉉)

―2025年下半期「井上拓真vs那須川天心」部門読まれた記事


1位:井上拓真の“エグいアッパー”で那須川天心の顔面が…カメラマンがとらえた決定的瞬間「ボクシングをなめるな」“ブーイングも飛んだ”現地ウラ側
https://number.bunshun.jp/articles/-/868568

2位:「天心選手は混乱したはず…」元世界王者・飯田覚士が見た井上拓真vs那須川天心“勝負の分かれ目”「突き飛ばされても拓真選手は表情を変えなかった」
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3位:「嫌われてるんですかね」敗者・那須川天心が“初めてのブーイング”に本音ポツリ「優しくしてよ…」井上拓真への大歓声を呼んだ井上尚弥の“ある行動”
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4位:長谷川穂積がズバリ指摘「これまでの相手と井上拓真ではレベルが違った」那須川天心に“打開策”はなかったのか?「キャリアの差が出たというしかない」
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5位:井上拓真は「この勝利で“尚弥の弟”からブランドの意味が変わった」元世界王者のプロモーターがホンネ評価「次に誰と戦うのか? みんな興味が湧く」
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