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「マリニンが何度も転倒していた」史上初の偉業の3日前に起きていた“ある異変”…なぜ7本の4回転ジャンプを成功できたのか? 本人が語る舞台裏 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2025/12/12 11:04

「マリニンが何度も転倒していた」史上初の偉業の3日前に起きていた“ある異変”…なぜ7本の4回転ジャンプを成功できたのか? 本人が語る舞台裏<Number Web> photograph by Asami Enomoto

GPファイナルのフリーで圧巻の演技を見せたイリア・マリニン

珍しく緊張して見えたSPのマリニン

 翌日SPの演技前、マリニンは普段の彼には珍しいほど緊張して見えた。コンビネーションジャンプに、史上初となる4アクセル+3トウループを跳ぶ予定をしていたのだ。だが4アクセルの着氷でステップアウトして、結局最後の4ルッツに3トウループをつけた。アクセル、ルッツとも4分の1回転不足の判定が出て、94.05の3位という予想外のスタートに。

 1位はすべてのジャンプを成功させ、会心の演技で108.77と北京オリンピック以来初めてベストスコアを更新した鍵山優真。2位は4ルッツを含むほぼノーミスの演技で98.06を得た佐藤駿だった。

 新たなコンビネーションジャンプに挑むプレッシャーはどれほどのものだったのかと聞くと、こう答えた。

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「やはり普段よりは緊張していました。トレーニングを積んできたという自信はあったのですが、でもやはり難しいコンビネーションだと実感しました」

 失敗したことで、これまでの自信が揺らいだところはないのだろうか。

「それはないですね。ここにはファイナルのタイトルを守ることを目的にしてきたのではなく、オリンピックでの戦略のために新しいことを試す場だと思ってきたんです」と余裕の表情を見せた。

4回転を7本成功…神がかっていたフリー

 2日後のフリーでマリニンは、おそらくノーミスで滑り切るだろうという予感があった。シェイリーン・ボーン振付のメドレーで、4フリップから演技を開始。次の4アクセルも完璧にきめ、4ルッツ、4ループと着実に降りていった。表情も、目の光も、何か人間を超えた特別なゾーンに入り切っているかのような犯しがたい印象があった。

 後半に入り、4ルッツ+1オイラー+3フリップ、4+3トウループ、4サルコウ+3アクセルシークエンス、コレオシークエンスではバックフリップまできめ、得意のラズベリーツイストも余裕で見せた。

 合計7本、6種類の4回転。ものすごいものを見せてもらった。会場にいた誰もが、そう感じたに違いない。

【次ページ】 「朝起きたら、自分の中で何かが変わっていた」

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