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「日本語でしゃべる方が楽」新大関・安青錦が明かす驚速の日本語習得法…ウクライナから来日3年半でなぜここまで?「一番は聞くこと。恥ずかしくない」
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byDaiki Watanabe
posted2025/12/17 17:01
初土俵から所要14場所で史上最速の大関昇進を果たした安青錦(付出入門者を除く)
習うより慣れろ。これが角界の主たるメソッドであり、安青錦もそのやり方で日本語を身につけてきた。日本に持ってきた少ない荷物の中に辞書はなく、いまだに持っていない。「日本語はゼロだった」という状態から叩き上げてきた21歳は、習得の要点をこう語る。
「一番は聞くことです。最初は聞いてわかるようになる。少しでもわかるようになったら自信を持ってしゃべるようになるし、覚えるスピードも速くなる」
まずは周囲の会話に耳を傾け、音を受け取ること。そこに自分の知らない言葉を見つけ出したら、「どういう意味?」と尋ねること。その2つの「聞く」を繰り返しながら安青錦は上達していった。
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「わからない中から1つを取り出して、その意味を聞いてメモする。それをよくやってました。あとはメモした言葉を1日2回とか3回とか何度も使うこと。やっぱりノートに書いてそのままにすると忘れちゃうんで、使った方が覚えやすいです」
日常の中にあった学習の場
アマチュア時代に世界大会で知り合った関西大学相撲部の山中新大さん(現関大職員)を頼って来日したのが2022年の4月。神戸市内の山中さんの実家に住まわせてもらいながら、関大や報徳学園高校の道場で稽古を積んだ。地域の日本語教室に顔を出すこともあったが、主たる学習の場は生活そのものの中にあった。ひとりで外食するようなときも、メニューが読めなくても店員と話すことでなんとか解決していたという。
「別にコミュニケーション能力はそんな高くないですよ。元々静かな人なんで。人としゃべるの苦手だったけど、大人になったところがあるかもしれない(笑)。日本に来てかなり変わりました。今でもわからない言葉は兄弟子とか付け人とか誰にでも聞きます。恥ずかしくない」
日本人には恥ずかしがる人が多いかもしれないと言うと、「目標があれば(できる)。恥ずかしいと思ったことはない」と安青錦は繰り返した。
'22年12月に安治川親方(元関脇・安美錦)が再興したばかりの安治川部屋に入門。「やっぱり一番覚えたのは相撲部屋に入ってから」と語るように、安青錦の「聞く」は日本語漬けの24時間共同生活の中でさらに深化していく。
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