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「二度にわたる大乱闘」巨人・堀内恒夫の顔面死球で「バッターとして終わった」ヤクルトOBの告白…長嶋茂雄も嘆いた「どうしてこんなことばっかり」 

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/12/08 11:04

「二度にわたる大乱闘」巨人・堀内恒夫の顔面死球で「バッターとして終わった」ヤクルトOBの告白…長嶋茂雄も嘆いた「どうしてこんなことばっかり」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

ヤクルトをはじめ多くのチームでコーチを歴任した伊勢孝夫。現役時代はその勝負強さから「伊勢大明神」の愛称で知られた

「外木場から打ったのは秋田でしたね。“あっ、アカン”いうて止めたバットに当たった打球がたまたまライト線に飛んでサヨナラになって。古葉(竹識)さんは“またしてもお前にやられた”って言ってましたね」

顔面死球を受けて「バッターとして終わった」

 何もかも順調に推移しているかのように思われた。しかし、ここで伊勢に試練が訪れる。7月10日、神宮球場で行われたジャイアンツ戦。マウンドにはエースの堀内恒夫が立っている。このとき伊勢は顔面に死球を受けたのである。

「この日は大変な試合やった。まず、こちらがシピンにデッドボールを与えていきなり乱闘。そして大杉が自打球を顔に当てて途中退場。その後、ワシがファーストを守っていたんだけど、今度はワシが左の目の下にデッドボール。それでまた乱闘。ホームベースに倒れていたときに、相手ベンチから長嶋さんが出てきて、“どうして、今日はこんなことばっかり起こるんだ?”って言っていたのを遠くで聞いていた。そんなことを覚えていますよ」

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 試合途中、神宮球場近くの慶應義塾大学病院に運ばれた。するとそこには顔を腫らした大杉の姿もあった。「顔は大きく腫れ上がり、鼻もバカになっていたよ」と伊勢は振り返る。その後、しばらくの休養期間を経て、一軍に復帰する。しかし、なかなか本来の調子を取り戻すことはできなかった。

「ピッチャーの手からボールが離れる瞬間、無意識にケツが引けるんです。“こっちに向かってくるんじゃないか?”、そんな恐怖心。それがある以上、バッターとしては終わりですよ。実際に引退するのはその二年後だけど、バッターとしてはもう終わってましたね」

 本人はそう語るが、伊勢はこの年10月、一世一代の活躍を見せることになる。

続く

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#2に続く
広岡達朗が激怒「ジャイアンツはここまで落ちぶれてしまったのか?」“巨人との大乱闘”でヤクルトナインが覚醒した日「あんなチームに負けてたまるか」

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