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「東北No.1だった…“消えた天才”ピッチャー」仙台育英・須江監督が忘れられない15歳中学生…今年のドラフト取材で思い出した「大谷翔平世代の神童」
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中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2025/12/10 11:04
今年のドラフトを前に取材に応じた仙台育英・須江航監督
「想像するにですけど、西谷さん(浩一=大阪桐蔭監督)も、高嶋さん(仁=智弁和歌山前監督)も、小倉さん(全由=日大三前監督)も、渡辺さん(元智=横浜元監督)も、みんな同じようなことを思うんじゃないですか。タイムマシーンに乗って昔に戻れるなら、若い頃、伸ばしてあげられなかった才能を、今の知識をもって何とかしてあげたいな、って。郁也の場合は特にそうだったのですが、早熟な選手ほど周りのサポートが大事なんですよ。そういう意味では、僕は渡辺を支えてあげられなかった。だから、申し訳なかったなって思うんです。渡辺郁也が今、メジャーリーガーになっていた可能性だって、僕はあったと思っているんで。バッターとしてですけどね。高校、大学でも彼は本当にがんばったと思うけど、持っているポテンシャルからいったら、こんなレベルじゃないよなって思ってたんで。はるかに上のレベルに到達していても、ぜんぜん不思議じゃなかった。僕の中では天才と言えるのは後にも先にも郁也だけですよ」
「郁也の話なら、1日でもできますよ」
須江に渡辺の話を聞いた日、そろそろ切り上げようとしたところ、こう未練を吐露した。
「もういいんですか? 郁也の話なら、1日でもできますよ。それくらい思いのあった選手なので」
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須江が高田の能力を「基礎的なスケール感は過去イチ」と絶賛する姿を見ながら、渡辺と高田の姿が何度となく重なった。
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高校野球の指導者が今後、高田に何ができるかは限られるものの、今度こそ、須江は教え子がメジャーリーガーになるまで、あるいはそれクラスのビッグプレーヤーになるまで遠くから伴走する覚悟なのだと思った。
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