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甲子園の風BACK NUMBER
「打者なら支配下指名も濃厚」だった18歳…なぜドラフト前に進路変更? 経験わずか2年でも“最速153キロ”投手にこだわりのワケ「プロに行くからには…」
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/11/24 11:03
投手挑戦から数カ月で150キロをマークした兵庫・滝川高校の新井瑛太(18歳)。スカウトの評価も高く、本人もプロ志望だったが…?
生真面目な性格の新井は、レベルが高い打者であればあるほど力の出し入れよりも全力で向かっていく傾向があった。“かわす”ピッチングが良しという訳ではないが、ギアを上げるというよりは真正面から力勝負をしがちだった。
「だからうまくカットされたり、フォアボールを狙ってボールを見て来られたりして、あの試合は投げづらかったですね。そこでカウントを悪くして四球が増えていって」
夏が近づくと自己最速が更新されていき、最速は153キロまで伸びた。
最速153キロでも…「スピードだけでは生き残れない」
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だが、上の世界で本気で勝負するなら、スピードだけでは生き残れない。それは誰よりも本人が感じていた。必要なものは投球術と、やはりコントロール。夏まで限られた練習時間はとにかく厳しいコースに投げ切る練習に充てた。
「春の大会が終わってからは右バッターのアウトコースを中心に組み立てて、しっかり投げ切る練習をしてきました。1球決まっても、その次がボールだったら何回もアウトコースに投げ切れるまで投げ続けるようにしました。ブルペンに入れる日はできるだけ毎日入って投げていました」
5月末からは週末は練習に試合にフル稼働。暑さが増す中でも投げ込みは練習の中の日課になっていた。
「練習試合は毎週登板していましたが、(本番の夏の県大会は)疲れなども全くなくて体調も良かったです。実際に初戦はフォアボールが少なくて、球数も120球くらいで完投して勝てたので、自信にもなりました」
夏の県大会の初戦・津名戦は6安打2失点で完投勝ち。5四死球こそ許したが、無駄なボールは少なく、球数は122球に留めた。春までに見た不安定さはなくなり「思うようなピッチングはできました。それだけに、(3回戦で)早く負けてしまったのは本当に悔しかったです」と新井は悔しさをにじませた。

