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「全力を尽くします」一度は受験保留も決断…福間香奈33歳は今度こそ“初の女性将棋棋士”になれるか「A級棋士相手に初勝利」した実力派女流も
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/11/18 17:00
2度目の棋士編入試験受験の権利を獲得した福間香奈女流六冠
「昨年は不戦敗で終わってしまって残念でした。今期は自分なりに一局一局、しっかり指せたと思います」
それでも福間は10月6日の王位戦予選で浦野真彦八段に勝ち、2024年7月からのプロ公式戦の成績が10勝5敗、勝率は6割5分以上となった。所定の成績を挙げたことで、「棋士編入試験」を受ける要件を満たした。
福間は終局後に「棋士編入試験はタイトル戦の対局日程と並行して行われ、出産を経て家での子育てもあります。両方を現実的にやっていけるのか、よく考えないといけません。体調面も考慮して決めたいと思います」と語り、要否を保留した。
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2021年7月から22年5月まで、里見(福間の当時の姓)女流五冠はプロ公式戦で黒田尭之五段、高田明浩四段、本田奎五段、澤田真吾七段、池永天志五段、古森悠太五段らに計10勝した(段位はいずれも当時)。半数以上が20代から30代の精鋭で、本田五段は19年度の棋王戦の挑戦者だった。
厳しい勝負が予想されるが
棋士編入試験を受ける要件を満たした里見は、熟慮の末に受験を表明した。前記の棋士たちに勝ったのは、勢いやフロックの結果ではない。里見は棋士になる実力を十分に有していた。私こと田丸九段は、試験に合格すると思った。
しかし、里見は2022年8月から始まった棋士編入試験の五番勝負で、徳田拳士四段、岡部怜央四段、狩山幹生四段に敗れ、3連敗で不合格となった。私が見た感想は、里見は負けてはいけないとの思いが強く、全体的に指し方が硬かった。通常の対局とは違う緊張感がやはりあったようだ。
福間女流六冠は11月4日、2回目の棋士編入試験を受けることを、日本将棋連盟を通じて表明した。
来年1月から月ごとに行われる五番勝負の相手は、対戦順に山下数毅四段(17)、片山史龍四段(21)、生垣寛人四段(22)、岩村凛太朗四段(19)、炭崎俊毅四段(17)。厳しい三段リーグを勝ち抜いた若手精鋭ばかりで、タイトル獲得を嘱望されている者もいる。
福間にとって、今回も厳しい勝負が予想される。ただ失うものはない。実力を存分に発揮して戦えば、活路が開けるかもしれない。
“元奨励会三段”27歳は2強体制に割って入れるか
それにしてもプロ公式戦で10勝以上、6割5分以上の勝率は、並大抵ではない。諸々の条件は違うが、一定期間に同等以上の成績を挙げたプロ棋士は、全体で3割ほどしかいないだろう。今回の棋士編入試験の結果を予断したくないが、福間が今後に3回目の要件を満たしたら、無条件でプロ棋士に認めるべきだと思う。

