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野球のぼせもんBACK NUMBER
戦力外通告でショック「ぼそぼそ小声で…まさかの言葉」ソフトバンク現地記者が初めて聞いた“田浦文丸の本音”…ダルビッシュ絶賛、村上宗隆を抑えた男の苦悩
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/18 11:01
ダルビッシュが絶賛した“魔球”を持つ前ソフトバンク・田浦文丸
アメリカやキューバ、オランダなど強豪国の打者たちのバットがくるくる回った。威力を発揮したのがチェンジアップだった。
チェンジアップは打者のタイミングを外す目的で投げられる球種で、回転数が少ないために打者の手元でスッと沈むのが一般的とされる。
しかし、田浦が投げるチェンジアップは一度浮き上がって、そして沈むという独特な軌道を描く。
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捕ったことのある捕手に聞けば地面と平行に反時計回りに回転して、数値で言えば2200~2400回転ほどのチェンジアップとは到底思えない強めの回転がかかっているのだという。そのため右投手が投げるカーブのような軌道を描いてミットに収まる。ただ、投げ方としてはチェンジアップのため、ストレートと同じように腕を強く振って、そのボールは投げ込まれるのだ。
だから、空振りした打者はたいてい唖然とした表情を浮かべる。
「なんだ、今のは?」「見たことないボールだ」「誰も真似できない」「あれは魔球だ」
田浦のチェンジアップが特殊球とされる所以である。
村上宗隆から3球三振…熊本の怪物だった
また、秀岳館高校では2年生の春から4季連続で甲子園に出場し、うち3度もベスト4まで進出している。同じ熊本県内に同学年の怪物打者がいたのだが、そこを乗り越えて全国の舞台に駒を進めたのだから強いわけである。それが九州学院高校の村上宗隆(現ヤクルト)だった。のちに“令和初の三冠王”となる大打者は当時も「肥後のベーブ・ルース」の異名をとる怪物で、2、3年生の夏はいずれも県大会決勝で激突している。村上の高校最後の打席は見逃しでの3球三振。そのマウンドには田浦が立っていた。
そんな実績を引っ提げて2017年ドラフト5位でソフトバンクに入団した。
ダルビッシュも絶賛…「ありがたいです」
プロ野球においても、田浦のチェンジアップは衝撃そのものだった。
2年目に当時19歳で一軍昇格を果たすと、2019年7月10日の西武戦でデビューを果たして2回をパーフェクトに抑えた。
するとこの日の投球を動画で目にしたダルビッシュ有がSNSにこんな投稿をした。
「元々すごいチェンジアップ投げるなぁって思ってたけど、スローでみたら凄い。俺がこんなんやったら1球で肩もげる」
その絶賛の言葉を受けた田浦は「ありがたいです」と遠慮がちにはにかんでいた。

