Number ExBACK NUMBER
ヒグマとの死闘「腸をグッと掴んで思いきり引っ張った」「血だらけでぐちゃぐちゃ」元ラガーマン“ベテラン猟師の教訓”「不幸中の幸いだったのは…」
text by

風来堂Furaido
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/14 11:02
駆除の最中、手負いのヒグマに襲われた山田文夫さん。噛みつかれた口や手には後遺症が残った(写真はイメージ)
「不幸中の幸いだったのは…」
その間、猟師としてはあるまじき事故だと、ベッドの上では反省しきりだったという。
まず、あの距離で、最初の一発で仕留められなかったのがいけなかった。そして、ササ藪の中で動いていた場所を見失った。にもかかわらず、無警戒にクマに近づいたこと。もっと慎重であるべきだった。崖の中腹であともう数分、じっと目視していればよかった。「きっとあのへんだろう」という無根拠な予想でクマに近づいてしまったのは、完全に油断だった。
「不幸中の幸いだったのは、一緒にいた若いもんに被害がなくて、俺だけで済んだこと。そう思ったらホッとしたね」
ADVERTISEMENT
当該クマは、山田さんと格闘した場所から数mの場所で絶命していた。体長1m、体重70kg、だったという話も聞いたが、性別については把握していない。もう一頭のクマは木から落ちたあと、行方不明となっていた。
山田さんには後遺症が残った。顎に嚙みつかれ左右に振られ引きずられたことで耳にも影響があり、聞こえが悪い。口には麻痺が残って滑舌が悪くなり、飲み物もうまく飲むことができなくなった。2本の手の指に麻痺があり、感覚がない。
顔の傷は、前述のように自家製の「網脂」の効果で治りは早く、傷痕は残っているが、年齢とともに刻まれるシワと同化して一見すると分からなくなっている。しかし、顔まわりのダメージが多いこともあり、冬場は、マスクの下にカイロを入れなくてはいけないほどの冷えに悩まされるという。
『クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)※書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
