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「撃ってくれ!」「弾ないんだわ!」ヒグマに襲われた69歳ベテラン猟師の“誤算”「入れ歯は割れて、口は裂けた」「眼球をえぐられなくて良かった」
text by

風来堂Furaido
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/14 11:01
二頭のヒグマを駆除するために出動した猟師の山田文夫さんとSさん。二人の“誤算”とは何だったのか(写真はイメージ)
「どう嚙まれたかなんて、順番は分からん。ただクマとくっついて格闘して引っ張り回されたな。顎にがっつり嚙みつかれてたから、下の入れ歯は割れて、口は裂けたしね。
目のところも引っかかれてさ。クマの爪痕がまぶたの上と下に残っているんだけど、眼球をえぐられなくて良かったよ。腕や腹も嚙まれながら、足で蹴ったり手で殴ったりと抵抗したな」
「撃ってくれ!」「弾ないんだわ!」
自身が命がけの格闘を続ける中、Sさんには「来るなよ! 来るなよ!」と叫んでいた。「しつこい! しつこい! いつになったら離れるんだ!」という思いが繰り返し脳裏をよぎった。
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クマは体重70~80kgくらいで、そんなに大型ではなかったという。Sさんが「うわーっ!」と大声を出すと、ふっと自分の身体からクマが離れて隙間ができる瞬間があった。
「これはと思って、空砲を撃ってもらえばもっと離れるんじゃないかと思ってさ『Sくん! 撃ってくれ!』って叫んだのさ。そうしたら『山田さん、弾ないんだわ! 取ってくるわ!』って言って、車まで弾を取りに行っちゃったのさ。あれは参ったな(笑)」
<続く>
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