「優勝は2005年が最後って、おかしいやろ」岡田彰布は“勝てない阪神”をどう変えたのか？「よくもまあ、こんな状態で…」2年目にあった“最大の後悔” 

「2年間の最大の悔い」は巨人戦の“ある場面”

　このシーズン、岡田の心が揺れる出来事があった。それは巨人の監督交代。学生時代からしのぎを削り、阪神と巨人の看板を背負ってきたライバル、原辰徳が監督を辞めた。60歳代監督の2人のうち1人がユニホームを脱いだ。これで60歳代は岡田ひとりになった。どこか寂しさは募ったが、そこは勝負師だ。感情を隠し、シーズンのライバルを巨人と言い切った。

「もうこれ以上の低迷は許されない。巨人はそこまで追い詰められている。だから新監督になって、球団挙げて巻き返しに躍起やろ」と照準を定めた。ただ、競り合うにはタイガースの態勢が整えられないでいた。あれほど効果的だった四球からのパターンは相手に読まれ、ボール球に手を出してしまう焦りを露呈。特にクリーンアップの不振は深刻だった。

　森下翔太、大山、佐藤輝。主軸3人を時期をずらして二軍に落とした。強烈な荒療治にファンの反応も過敏だった。それでも岡田はブレることはなかった。「この状態で一軍にいてもな。厳しい？　なんでやの。結果が出なければ仕方ない」。クリーンアップが二軍行きを命じられる事態になった。これは岡田の決断であり、責任の所在は明確だった。「よかれ」とするなら、厳しい処置も。これも岡田流の対処法だった。

岡田彰布の監督在任中は厳しい扱いを受けることが多かった佐藤輝明　©Takuya Sugiyama

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　そんなやり繰りでしのいで、9月を迎えた。「普通にやればいい」のに、普通にできないチーム状況。岡田が常に描く勝負の9月がやってきた。「よくもまあ、こんな状態でここまでやってこれたもんよ」。マスコミを通じて鼓舞する。アレンパへの正念場となった9月末の巨人2連戦。この時点でゲーム差は2。初戦を取っての2戦目だった。

　いまになって思う「2年間の最大の悔い」がこの試合だった。0－0の6回裏。無死で大山が二塁打で出た。打席は佐藤輝だった。ベンチの岡田は何もサインは送らなかった。その裏には「悪くても走者を三塁に進めるように」の思惑はあった。かねてから口にしていた「選手が役割を理解している」との評価があらわれる局面。だが佐藤輝は2球目を簡単に打って出ての凡飛。この場面を最大の悔いとした。

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