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紀平梨花23歳が打ち明けた“かつての自己嫌悪”「すごく辛かった」ほぼ3年ぶり復帰戦の後に語った本音…パートナーが「さすがだな」と感じた理由
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2025/11/04 17:11
3年ぶりの復帰を果たした紀平梨花とパートナーの西山真瑚
フリーダンス直後に見えた“ある表情”
だが翌日のフリーダンスを終えた後、取材の場に姿を現したときの表情はリズムダンスのときのそれとは異なり、どこか硬さがあった。
「練習でもできていたような演技ではないので、悔しい思いがはじめに来るんですけど、自分の気持ちの状態だとか、試合の感覚は良い状態に持っていけたので、そこが良かったなと思います」
望んでいた演技ではなかったことへの悔しさがにじんでいた。フリーダンスは4位、総合では3位で大会を終えた。
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今大会には、リズムダンスとフリーダンスの技術点の合計点が定められた基準を上回り、その上で優勝すれば、国際大会に派遣される決まりがあった。その場合はミラノ・コルティナ五輪代表への道が続くことを意味していたが、技術点、順位ともにクリアできず、道は閉ざされた。紀平はアイスダンス転向にあたり、「可能性がある限りは、どのチャンスもいかせるように努力していきたいです」と語ってはいたが、練習開始して1カ月で臨むことを考えれば、実現性も分かってはいただろう。だからこう語る。
「2030年(のフランス・アルプス五輪)へ向けて、しっかり練習していければと思います」
「自己嫌悪だったり…すごく辛かった」
一方で、予選会を兼ねた今大会を経て、12月の全日本選手権への出場権を得ることとなった。
当初は悔しさもにじませた紀平だったが、一方でみせたのは充実感だった。
「やっぱり頑張れる、っていうことがほんとうに幸せで」
と切り出した紀平は、怪我によって大会への出場はむろんのこと、日々の練習もままならないでいた期間をこのように振り返る。
「頑張れないっていうのがすごく辛かったです。『頑張り方が分からない』みたいなのをずっと繰り返していて、怪我をしていると安静にしなきゃいけないっていうのがあるので、少しでも痛みが出ると間違った行動をしているような気がして。休んでいると、『トレーニングができてない』ってすごい自己嫌悪だったり、そういう気持ちがすごく強くて、すごく苦しい時期が続いていました」

