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「ミス連発でもケガ人続出でも」日本シリーズ王手・ソフトバンクの“圧倒的な底力”…山川穂高の3連発に“代打の切り札”近藤健介「勝負どころの決断だと」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2025/10/30 17:05
日本シリーズ史上5人目となる3試合連続本塁打を記録したソフトバンクの山川穂高
1死から牧原大成内野手が内野安打で出塁。ここでベンチの小久保裕紀監督は迷わず8番・海野隆司捕手に送りバントのサインを出した。次打者はここまで阪神打線をわずか3安打に抑え込む好投を見せていた先発の大津亮介投手だ。球数はまだ59球で、まだまだ2、3回は投げられる状況だった。
しかしその大津に代えて代打で送り出したのが切り札・近藤健介外野手だったのである。
「続投させようかと迷ったけど、(走者が)二塁に行ったらもう1点取りに行こうと思った」
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近藤は右脇腹痛が完全に治癒しておらず、守備にはつけない。PayPayドーム福岡での1、2戦は指名打者で出場したが、指名打者を使えない甲子園球場では控えに回っていた。その結果、この場面でベンチに球界でも希代のヒットメーカーが残っていることが、ソフトバンクの強み、層の厚さということだろう。
「勝負どころの決断だと思った」
会心の代打策も「打った近藤がすごい」
こう心に秘めて打席に向かった近藤がしっかり結果を残す。阪神3番手の左腕・桐敷拓馬投手のツーシームを右前に弾き返して、結果的には決勝点となる3点目がスコアボードに刻まれることになる。
「守りができない中で、代打での一振りで絶対に仕事をしようと思った。この代打起用に結果で応えることができてよかった」
こう語った近藤。しかし、この場面で近藤という切り札がいる。6番以降の打線編成にすら四苦八苦している阪神との、そこが大きな差なのかもしれない。
「スコアリングポジションなら近藤と決めていた。打った近藤がすごいと思います」
試合後に会心の代打策をこう振り返ったのは小久保監督だ。
ソフトバンクが王手をかけて、阪神は崖っぷちに立たされた。データ的には先勝後の3連敗から逆転日本一になったのは1955年に南海を倒した巨人だけである。


