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体操・最年長の杉原愛子26歳、驚異的な“復活金メダル”はナゼ起きた?「じつは“体重マイナス1キロ”の体調不良も」ハッキリ語った“悔しさ”の正体 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2025/10/29 11:02

体操・最年長の杉原愛子26歳、驚異的な“復活金メダル”はナゼ起きた?「じつは“体重マイナス1キロ”の体調不良も」ハッキリ語った“悔しさ”の正体<Number Web> photograph by Getty Images

体操世界選手権・種目別ゆかで金メダルを獲得した杉原愛子

金メダルを生んだ“ターニングポイント”

 中でも杉原自身が成功ポイントとして挙げたのは3コース目で行なう「後方2回半ひねりからの前方宙返り」の組み合わせ技。

「3コース目のところでちょっと不安な部分があった。予選ではそこで蹴りが抜けそうになり、そこが0.3から0.5の減点だったと思う」

 ここで見せたのが26歳のベテランならではの総合力だ。杉原は競技生活から離れていた時期にじっくり勉強した審判の知識を生かして厳密に減点要素を洗い直したうえで、指導を受ける大野和邦コーチはもちろん、男子ゆかのスペシャリストである南一輝にもアドバイスを仰いで修正を図っていった。

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 1コース目に組み入れたF難度の「後方伸身2回宙返り」や、最後の「後方屈身2回宙返り」でも、着地で頭の位置が下がることによる減点の修正を綿密に行ない、「水平ターン」や「足持ちターン」に関してはターンし終わる際のところまで足の位置を正しくキープするなど、細部まで徹底的に意識を巡らせることも忘れなかった。

 着地の際に弾かれる選手が多く見受けられるなど、使いこなすのが難しいとされる中国メーカー「泰山(タイシャン)」製のゆかに対するアジャストも徐々に向上した。

じつは“体重マイナス1キロ”体調不良もあった

 インドネシアに着いた後に「お腹が緩くなってしまった」といい、当初は体重が1キロほど減って感覚の変化に苦慮したと明かしていたが、「だんだん慣れてきて自分の体が泰山のゆかの器具に対して合ってきたし、種目別決勝は体力もすごく残っていた。それに一番会場が沸いていたのが種目別で、力になった。決勝では一番の演技ができた」と会心の演技に至った理由を振り返った。

 これには2017年と2021年の世界選手権種目別ゆかで金メダルに輝いた村上茉愛女子強化本部長も、帰国会見の壇上で小さく頷きながら杉原のコメントを聞き、満足そうな表情を見せていた。

「今年は結果がついてきたという部分も含めて、今が一番進化しているし、成長しているという実感がある」

 杉原は充実感を口にする。

「だからこそ悔しさがある」と言うのが予選2位通過でメダルを射程にとらえていた個人総合だ。1種目めの跳馬で「ユルチェンコ1回半ひねり」の着地をピタリと止めて好スタートを切ったが、2種目めに行なった鬼門の段違い平行棒で落下。続く平均台でもふらつきがあって点数が伸びず、最後のゆかで立て直したものの7位入賞にとどまった。

 しかし、この時に流した大粒の涙が杉原の心に火を付けた。

【次ページ】 杉原がハッキリ語った“悔しさ”の正体

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