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阪神・藤川球児監督が日本シリーズ初戦で“あえて冒した危険”…9回をクローザー岩崎優でなく、石井大智に託したワケ「もう一丁行くぞと言われて…」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/10/26 17:05
日本シリーズ第1戦を2-1の僅差で逃げ切った阪神・藤川球児監督
6回に佐藤輝明内野手の二塁打などで逆転した阪神は、7回115球を投げた先発の村上頌樹投手から8回にスイッチ。“勝利の方程式”から行けばここで石井という場面だったが、ソフトバンクの打線が3番の柳町達外野手から左打者が4人並ぶことで、藤川監督は左の及川雅貴投手を送り出した。
その及川が1死から近藤健介外野手に二塁打を打たれ、栗原陵矢内野手を三振に抑えた2死二塁。ソフトバンクの小久保裕紀監督が動いた。続く川瀬晃内野手に代え代打に山川穂高内野手を送り出したところで、石井がマウンドに上がることになった。
これは常道の投手交代だった。
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「“(走者が)塁に出たら行くぞ”ということで、ある程度は準備はできていました」
こう語って準備万端で登板した石井は、山川を歩かせたものの、7番の野村勇内野手を1球で左飛に打ち取りしっかり仕事を終える。
そしてスタンドのファンも含めてほとんどの人が9回は守護神へのリレーと思っていたところで、藤川監督は石井をそのまま回跨ぎの9回も送り出したのだった。
星野さんはもう一つ、「回跨ぎをさせるなら」と、こんな話もしていた。
「もしどうしても回跨ぎをさせなければならないときには、最初にマウンドに上げるときに、“ここを抑えたら次(の回)も行くぞ”と事前に伝えとかないかん」
石井が試合後に明かした真相
これは投手起用がうまかった星野さんがたどり着いたリリーフ操縦術だった。ただこの石井のイニング跨ぎ、実はこのセオリーからも外れていたのである。
「8回のピンチで行って、ベンチに戻ったときに“もう一丁行くぞ”と言われたので“ハイ”という感じですね」
石井が試合後に明らかにした真相だ。
8回の登板は予定通り、しかし9回も行くことは最初から決まってはいなかった。星野さん曰く、「そこで気持ちの切れた投手」にもう1回を託したというわけである。
そんな難しさは確かに石井のピッチングにも影を落としていたのかもしれない。


