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阪神・藤川球児監督が日本シリーズ初戦で“あえて冒した危険”…9回をクローザー岩崎優でなく、石井大智に託したワケ「もう一丁行くぞと言われて…」
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鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/10/26 17:05
日本シリーズ第1戦を2-1の僅差で逃げ切った阪神・藤川球児監督
9回は先頭の代打・今宮健太内野手を空振り三振、続く牧原大成内野手を左飛に打ち取りあっさり2死としたが、そこから柳田悠岐外野手に152kmのストレートを中前に運ばれると、続く周東佑京外野手の3球目、二盗を試みた代走の緒方理貢の動きに坂本誠志郎のミットが前に出て打撃妨害。2死一、二塁とピンチが広がってしまう場面もあった。
ただ石井はそこを力でねじ伏せていった。
「1点差だったので何とか2アウトをとって“あと1つ頑張ろう”というところで。(打撃妨害出塁にも)何とか落ち着こうと思っていましたし、いい攻めができたかなと思います」
全26球でシリーズ初セーブを記録
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石井本人が振り返るようにパ・リーグ最高出塁率3割8分4厘を誇る柳町を150kmの真っ直ぐ2つであっさり追い込むと、最後も150kmで中飛に打ち取った。全26球、4つのアウトで石井は、シリーズ初セーブを記録したのである。
もちろん指揮官も無理を承知の回跨ぎだったはずだ。それでもこの大事な一戦で、セオリーを超える信頼が石井にはあったということだろう。今季は50試合、49イニング連続無失点記録を作った石井の存在が、阪神がレギュラーシーズンを歴史的大勝で勝ち切ってきた要だったという象徴のような起用だった。
2対1。お互いに投手力がストロングポイントのソフトバンクと阪神の激突は、予想通りのクロスゲームでまずは決着した。
「それだけのゲームだった。よくやってくれています」
試合後に石井の回跨ぎピッチングをこう称えたのは藤川監督である。シリーズ初采配で石井に勝負を託した。その絶対的な信頼を感じさせる起用だった。


