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「手を抜くと、また1秒差で負ける」箱根駅伝予選会に2年ぶりに登場した東農大“怪物”エースの苦悩と安堵「おっかないですけど、2区区間賞を取りたい」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2025/10/20 17:01
2年前の予選会では1年生ながら日本人トップだった前田だが、昨年は体調不良で走れず、チームは1秒差に泣いた
箱根駅伝の本戦に向けての本格的な準備は、ここから始まる。伝統校の東農大は2年ぶり71回目の出場。今予選会では2大会前に箱根路を走った栗本航希(3年)、原田洋輔、深堀優(ともに4年)も1時間2分台でまとめるなど、成長の跡が見える。
シード権獲得へ、前田がどこまで状態を上げられるか
目標は2010年以来、16大会ぶりとなるシード権の獲得。カギとなるのは言わずもがな、往路で流れをつくる前田の働きだろう。予選会では「100%の状態ではない」と明かしており、気になるのは残り2カ月半のコンディション調整だ。1年時から前田を指導してきた小指徹監督は、前向きに捉えていた。
「予選会は『30%の状態だ』と本人が話していました。それであそこまで走るのは、さすが。持っているポテンシャルが高いですね。ここでもともと持っている力をすべて使い切っていないと思うので、逆にそれが良かったのかなと。故障のリスクが減りますので。本戦は、みなさんが想像するような区間に入ると思いますよ」
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2大会前の100回大会は、腰などの故障の影響でコンディションが整わなかった前田を、復路の7区に配置した。つなぐ役割を任せ、1km3分ペースで押していく最低限の走りで区間13位。華々しい箱根デビューとはいかなかった。ただ、来年1月2日は、満を持して送り出すつもりだ。起用区間を隠すつもりもない。各大学の看板選手が集う区間で、インパクトのある走りを期待している。静かな口調で話す61歳の指揮官は、言葉にぐっと力を込めた。

