第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
際立つメンタルの強さで出雲駅伝制覇…三冠へ視界良好の國學院大學・前田康弘監督が語った「サプライズ」な勝因
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小堀隆司Takashi Kohori
photograph byAFLO
posted2025/10/21 10:00
各校のエースが集う3区で堂々の走りを披露した國學院大學の野中恒亨
奇しくも、3位に入った創価大学の榎木和貴監督もまた「90」という数字でレースを振り返った。創価大は6区間すべての選手が5位以内と素晴らしい安定感を見せたが、優勝までは53秒足りなかった。
「今ある100の力を出せたかと言えばそうではなくて、あと10くらい足りなかったです。やはり國學院大さんみたいに、優勝するとか、絶対に勝つという気持ちを前面に出していかないと、まだ優勝という境地にはたどり着けないのかなって。しっかりと各区間で勝ちきる強さがなかったですね」
そう言われてみると、確かに國學院大の選手のメンタルの強さは際立っていた。留学生ランナー相手に怯まなかった野中だけではない。1区を務めた青木瑠郁(4年)は果敢に仕掛けたロングスパートが光った。4区で区間新記録を打ち立てた辻原輝(3年)も速いペースで突っ込み、最終盤でさらにスピードを上げるというまとめ方が見事だった。
殊勲をあげた野中は、自身の走りについてこう話す。
「思ったよりも余裕があって、レース中は『ああ行けんじゃん』って感じで楽しむだけでした。普段から、強い4年生に頼って僕らがレースをすることはもうやめたいって思っていて、今日は強い後輩の走りができたと思います」
強力な4本柱
だが、エースの走りができたかといえば、そうではないという。
「正直、まだ自分はエースではないですね。今日の走りでは、(黒田)朝日(青学大のエースで6区区間賞を獲得)さんとか、(工藤)慎作(6区区間3位)相手だと絶対に勝てないですし、こんなんじゃダメだなって思っています。練習でも、上原さんと瑠郁さんと平林さん(卒業後は國學院大を拠点に練習)がいて、同期にも強い辻原がいる。間違いなく僕は現チームの4番手だと思って練習しているんですけど、そこで『絶対に勝ってやる!』って思いながら走れているのがデカイかなって。まだ一本走っただけなので、次の全日本と箱根をしっかりとハメて、残り2本も大事なところで走りたい。國學院大に野中ありっていうふうな走りをここからさらに見せていきたいです」
今季の國學院大の強さは、束になったエース力にあるのだろう。主将の上原、青木、3年生コンビの野中、辻原が強力な4本柱として力を発揮する。1枚、2枚ならより強力な札を持ったチームも存在するが、このフォーカードに勝つのはそう容易いことではないだろう。
さらに、次の全日本大学駅伝に向けて、前田監督はこう表情を引き締める。
「選手層では負けていないと思うので、あとは決め手ですね。野中とか上原、青木や高山、辻原をもっと磨いていけたら、視界は良好かなと思います。たとえば(出雲駅伝の)3区も前回は辻原に任せたように、うちはエース区間でも替えがきく。それが良いところでもあって、ダメなところでもあるんです。もうエース区間はこいつしかいないっていう風に、もうちょっと大砲を太く、でかく成長させていきたいですね」
まずは前年度と同じく一冠を達成した。ここから全日本大学駅伝、箱根駅伝と息切れせずにチャンピオンロードを歩むことができるかどうか。大砲の成長が、三冠の鍵を握っている。


