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際立つメンタルの強さで出雲駅伝制覇…三冠へ視界良好の國學院大學・前田康弘監督が語った「サプライズ」な勝因

posted2025/10/21 10:00

 
際立つメンタルの強さで出雲駅伝制覇…三冠へ視界良好の國學院大學・前田康弘監督が語った「サプライズ」な勝因<Number Web> photograph by AFLO

各校のエースが集う3区で堂々の走りを披露した國學院大學の野中恒亨

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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 6区間をつないだ選手が誰も崩れず、颯爽と出雲路を駆け抜けた。

 2位の早稲田大学に38秒差をつけて、連覇を飾った國學院大學。今回の勝因について訊ねると、前田康弘監督はこう声を弾ませた。

「3区の野中(恒亨・3年)でしょう。野中サプライズ! あのメンツを見てもビビらず、普通に『僕やりますから』って言っていましたからね。相当、自信はあったんだと思います。もうあそこの走りがすべて。アンカーの上原(琉翔・4年)をかなりラクにさせましたよね」

 3区は出雲駅伝のエース区間だ。史上最速の呼び声高い留学生ランナーのリチャード・エティーリ(東京国際大学3年)や、10000mで26分台の記録を持つグラハム・ブランクス(アイビーリーグ選抜)らが顔を揃えたが、その中で驚きの走りを見せたのが野中だった。

 格上のランナーたちに臆することなく食らいつき、最後は集団から抜け出してたすき渡し。城西大学のヴィクター・キムタイ(4年)には9秒及ばなかったものの、区間2位の走りでチームの順位を5位から2位へと押し上げた。

 前田監督はサプライズという表現を使ったが、練習時の好調さからある程度のブレイクを予感していたという。

「もちろん、4年生の上原と高山(豪起)には負けたりもするんですけど、単独走の余裕度がちょっとチームの中でも抜けていた。良い意味で、こいつヤバいなと。で、この駅伝って3区が肝じゃないですか。そこで(各大学のエースに)対峙する選手を作らないと勝てない。もう今回の軸は野中と決めて、そこから肉付けする形であとの配置を決めていきました」

 軸となる選手が、ポイント区間で期待通りの走りをする。監督の目利きとエースの力が試される場面で、國學院大が上手くはまったということだろう。この春、大エースの平林清澄が抜けて、その穴をどう埋めるのかに注目が集まっていたが、しっかりとエースを育ててきた印象である。

ライバルが語る國學院大の優勝の理由

 一方で、5位と敗れた駒澤大学や、7位に沈んだ青山学院大学はこの3区でそれぞれ9位、10位と苦しんだ。やはり、エース区間で後れを取ったのが響いたのか。レース後、駒大の藤田敦史監督はこんな話をしている。

「勝負できた区間もけっこうあったんですよね。1区2位、2区2位と来て、4区と6区も2位でしょ。だから、うちは3と5(区間8位)だけなんですよ。良いところまで行ったとしても、ブレーキ区間があると勝てない。やっぱり流れが途切れたら駅伝というのは勝てないなと。そういうことですね」

 駅伝において、ブレーキ区間を作らないのは勝利の鉄則だ。國學院大だけではない。今回上位に入った大学はどこもひと区間で1分以上差をつけられた区間はなかった。

 では、優勝と2位をわけた差は何だったのか。早大の花田勝彦監督はこんな風にレース結果を分析する。

「想像以上に國學院大が強かったです。1区で多少出遅れても、2区で挽回して、3区でトップに立つ。そんな作戦を考えていましたけど、野中選手の走りは想定以上でした。私たちも山口智規(4年)が2区で区間賞を獲得して、鈴木(琉胤・1年)や工藤(慎作・3年)も思い切ったレースをしてくれた。90%くらいはやりたいことができたんですけど、相手の方が少し力が上でした」

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