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「ダイさん!私を出して!」ルーキーの直談判がチームを変えた? “呪縛を解いた”大阪マーヴェラスが「SVリーグ連覇」を宣言する理由 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byYohei Osada/AFLO SPORT

posted2025/10/08 11:00

「ダイさん!私を出して!」ルーキーの直談判がチームを変えた? “呪縛を解いた”大阪マーヴェラスが「SVリーグ連覇」を宣言する理由<Number Web> photograph by Yohei Osada/AFLO SPORT

SVリーグ初代王者に輝いた大阪マーヴェラス。キャプテン田中瑞稀は「連覇」を公言した

 主将の田中と同じく、負けが転機になったと語るのは指揮官の酒井だ。

 現役時代は日本代表でも活躍した名リベロ。JTとサントリーでプレーし、2018年の引退後は古巣サントリーやジェイテクトでコーチを務めた。女子チームの指導経験は昨季が初めてで「コミュニケーションの取り方からすべて気を遣った」と苦笑いを浮かべる。

 そんな酒井も、昨年12月の皇后杯準決勝でSAGA久光スプリングスに敗れた試合を分岐点の一つに挙げた。だが、選手との関係性を深めるきっかけになった試合は別にあるという。シーズン佳境を迎えていた3月15日のPFUブルーキャッツ石川かほく戦だった。

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 フルセットまでもつれた接戦で、酒井は目の前のコートで繰り広げられる攻防に目を向け、どんな手を打とうか、選手交代はどうするか、戦術を変えるべきか、と懸命に頭を巡らせていた。その横で一人の選手がアップゾーンとベンチ前を何度も往復していた。昨シーズン入団したルーキー、宮部愛芽世(あめぜ)だった。

 身体を冷やさないために着用するベンチコートを、脱いでは着てを繰り返しながら、忙しなく動き回る。この日リザーブだった宮部は自らを出場させてくれと酒井にアピールを重ねていた。

「出たい、出たい、私を出して、って。試合の前半からうまく回らないローテーションがあって、セッターが前衛にいたので、ここで2枚替えして私を入れてくれたら絶対回せると思ったから『行けます』って言い続けたんですけど、出番はこなかった。信頼がないからと言われたら確かにそうなんですけど、自信があったから。直談判したんです」

「ごめん、わからんかった」

 結果、勝敗がかかった第4セット、5セットに宮部の出場機会は訪れず、チームも敗戦。宮部は、ホテルに戻るバスの最前列に座っていた酒井に迷わず、こう口にした。

「ダイさん(酒井監督)、私のことを出すチョイスありました?」

 酒井も素直に答えた。

「ごめん、(アピールしていることが)わからんかった。次からは出たいと思ったら俺の名前呼んで」

 翌日、同じPFUを相手に3対0のストレート勝ちでリベンジを果たした。勝利はもちろん大きな収穫だったが、酒井の耳にはあちらこちらから自らの名を呼ぶ声が聞こえ始めた。

「『ダイさん!』って、愛芽世だけじゃないんです(笑)。みんな出たいと思うのは同じで、でもそれをどうアピールすればいいかわからないなか、愛芽世の行動でチームが変わった。彼女の影響力もですけど、自分たちで何とかしたいと行動する。そういう姿が終盤に差し掛かる中で間違いなく増えて、それがチームの一体感にもつながった。今シーズンはそこからのスタートなので。もっとアピールしてくれと思うし、ミスを恐れずチャレンジしてくれ、と。選手にはより強く促すようになりました」

【次ページ】 謙虚な指揮官、「連覇」を公言する選手たち

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