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「めっちゃ怖かった。店に行くと2、3時間怒られて…」”自称アメカジボクサー”堤聖也が語る古着屋で学んだ原点「服に着られるな、お前が服をまとえ」
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byYudai Emmei
posted2025/10/02 11:31
強豪日本人選手がひしめくバンタム級の主役に踊り出た堤
「エリートvs.雑草」と言われた井上拓真との対決
2018年にプロデビューし、8戦目で日本バンタム級のベルトを手に入れたのが3年前。4度目の防衛戦では穴口一輝と壮絶な打ち合いを演じて判定勝ちを収めた。試合後の控室で穴口は意識を失い、約1カ月後にこの世を去った。多くの人の記憶に刻まれ、2023年の年間最高試合にも選ばれた鮮烈な一戦だった。
世界初挑戦は29歳。アマチュア時代から背中を追い続けてきた井上拓真との対決は、「エリートvs.雑草」と言われた。下馬評では井上。しかし堤は無尽蔵のエネルギーで12ラウンド手を出し続け、1000発以上のパンチでエリートをねじ伏せた。
「激闘王」が95年組の一番手に
いつしか「激闘王」と呼ばれるようになった堤は、今年2月の初防衛戦でも激しい打ち合いを見せた。同い年の盟友、比嘉大吾を迎え、9回にキャリア初のダウンを喫するも、直後にダウンを奪い返すドラマチックな展開でドロー防衛を果たした。
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堤を含めた1995年生まれの「95年組」は、これまで7人もの世界王者を輩出している。ただ、同学年のトップランナーだった田中恒成は今年6月に引退し、井上は堤が王座から引きずり下ろした。比嘉も7月にリングを去り、今では雑草だった堤が一番高く咲き誇る花になった。
以前は彼らへの「劣等感」がモチベーションになっているとも話していたが、その立場は確実に変わり始めている。
「自分ではあまり変わった感じはしないけど、試合の時に変化に気づくのかもしれない。今が変化の最中だとしたら、それが悪い方に出ないようにしたいです。負けたら終わりの気持ちに変わりはないし、もう一度世界に行くといっても何年かかかってしまう。もうすぐ30歳で、負けたらこの位置には戻れないと思ってますから」
そうしたタイミングで堤はメキシコに単身武者修行に向かった。8月上旬から約1カ月、グアダラハラのジムを巡り、練習に没頭する時間を過ごすことにしたのだ。
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