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「あのラウンドを取っていたら…」堤聖也と比嘉大吾の“激闘”を長谷川穂積はどう見たのか?「辞める人間の表情じゃない」比嘉に伝えた“ある言葉”
posted2025/02/28 17:45

お互いにダウンを奪い合う激闘を繰り広げた堤聖也と比嘉大吾。長谷川穂積さんはこの一戦をどう見たのか
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Takuya Sugiyama
「比嘉陣営はジャブを相当練習してきた」
WBAバンタム級王者の堤と元WBCフライ級王者、比嘉の一戦は「どちらが勝つのか分からない」という観点から、関心の高い一戦だった。堤は昨年10月、不利予想を覆して井上拓真(大橋)から王座を奪取。本人曰く「サイクロンのような」という手数の多さと、食らいついたら絶対に離さない執念のスタイルは「だれと手を合わせても好勝負」という印象を我々に与えていた。
一方、フライ級時代に15連続KO勝利の日本タイ記録をマークした比嘉は昨年9月、6年ぶりの世界タイトル戦でWBOバンタム級王者の武居由樹(大橋)に惜敗。直後に引退を表明しながら再びグローブを握る決意をして今回の試合に臨んだ。心と体をどこまで仕上げているのか。勝敗の行方は「比嘉次第」という声も戦前は聞かれた。
両者は高校時代から友人関係という同級生対決でもあり、2020年10月のノンタイトル戦はドローに終わっていることから、決着をつけるリマッチでもあった。
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前半戦、試合を有利に進めたのは比嘉だった。長谷川さんは両者の動きを次のように見ていた。
「入場してきた表情を見る限り、比嘉選手のほうがいい表情をしていました。実際に入りは比嘉選手のほうが良かったです。何よりも効いていたのはジャブ。比嘉陣営はジャブを相当練習してきたと感じました。頭の位置をうまく動かし、ジャブを的確に当てて堤選手にペースを渡さない。堤選手は一発いいのを当ててからロープまで歩きながら詰めて手数で勝負するというスタイルです。その一発がなかなか当てられなかったですね」