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「めっちゃ怖かった。店に行くと2、3時間怒られて…」”自称アメカジボクサー”堤聖也が語る古着屋で学んだ原点「服に着られるな、お前が服をまとえ」

posted2025/10/02 11:31

 
「めっちゃ怖かった。店に行くと2、3時間怒られて…」”自称アメカジボクサー”堤聖也が語る古着屋で学んだ原点「服に着られるな、お前が服をまとえ」<Number Web> photograph by Yudai Emmei

強豪日本人選手がひしめくバンタム級の主役に踊り出た堤

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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Yudai Emmei

 その戦いぶりはいつも見るものの胸を打つ。強豪日本人選手がひしめくバンタム級戦線で、激戦を繰り返しながら主役に躍り出た堤聖也(29歳)。自称アメカジボクサーがその美学と野望を語った。
 発売中のNumber1128号に掲載の[95年組の激闘王]堤聖也「本物の強さを持つ王者でありたい」より内容を一部抜粋してお届けします。

アメカジボクサーの出発点

 ボクサーが人生を学ぶ場所がいつもリングの上とは限らない。堤聖也にとってのそれは、ワークウェアやミリタリーウェアのヴィンテージ品がうずたかく積まれた世界の中にあった。

 地元熊本の健軍町に今もある古着屋『SMOKY』。友達と一緒におそるおそる足を踏み入れたのは高校3年生のときだ。

「まあ怖かったっすね。めっちゃ怖かった(笑)。当時は高校生なんて俺とその友達ぐらいだったんじゃないかな。店に行くとなんかしらで2、3時間怒られて、でもまた行く。そこで人生のスタイル、価値観を教えてもらった感じでした」

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 オーナーの濱崎正智にはヴィンテージの知識や歴史を教わっただけではない。それ以上に言われたのは、人との繋がりや縁を大事にすること。そして、いい服を着るためのこんな心構えだった。

「お前自身がカッコよくないと、どんなにいいもので着飾ってもカッコ悪いままだ。服に着られるな。お前が服をまとえ」

 アメカジの魅力を知り、ワークウェアの歴史を掘り下げるうちに、堤は「これこそが本物じゃん」と考えるようになっていく。自称アメカジボクサーの出発点だった。

 高校卒業後に上京すると、濱崎に紹介された東京・小岩の古着屋『ジョニー』にも通い始めた。

 昨年10月、井上拓真に挑んだ初の世界戦の会見で着ていたルイスレザーズの赤いジャケット「サイクロン」は同店で購入したもの。学生時代から試合の応援に来てくれているオーナーの秩父広一郎が、堤のために入荷してくれたものだ。

洋服を通じての人生の教え

 ただ、秩父とはそのサイクロンを巡って世界戦前にこんなやり取りもあった。

「俺がちょっと弱音を吐いた時があって、そしたら夜中1時ぐらいに電話がかかってきたんです。サイクロンを返せって。お前が着たらダセえからと。嫌です! と断ったけど、ダメだ返せって(笑)」

 そんな風に洋服を通じて人生を教えてくれるのが濱崎や秩父だった。

「厳しいことも言ってくれるし、何かあれば怒ってくれる。『世界チャンピオンだと、みんな優しくしてくれるだろう?』とあえて言ってくれる。まるで父親みたいな存在で、すごく育ててもらっています」

 学生時代の堤はほぼオーバーオールで過ごし、7、8着を着回していた。大学を卒業してプロになると「そろそろデニムを」とヴィンテージのデニムに踏み出し、今では高額なアイテムも思い切って買えるようになった。それはボクサーとしての成長とも符合している。

【次ページ】 「エリートvs.雑草」と言われた井上拓真との対決

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#比嘉大吾

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